[ボクシング]
杉浦大介「チャーリー太田と八王子中屋ジムは世界の階段を昇れるか」

スポーツコミュニケーションズ

問われる交渉力と勝ち方

 もっとも、これですべてが約束されたわけではもちろんない。ここでニューヨークの関係者、ファンにアピールできたからといって、近未来のタイトル挑戦、それ以前のエリミネーションバウト(挑戦者決定戦)が決まったわけではない。さらなる大きな一歩を踏み出すべく、チャーリーと中屋ジムにはこれまで以上の頑張りが必要になってくるだろう。

 WBO王者アンドレイド(20戦全勝13KO)はニューヨークに本拠を置くスターボクシングの所属だが、知名度は高いとは言えない。それゆえにいきなりのビッグファイトは難しく、英国人との指名戦後も、下位ランカーと何戦か防衛戦を行なうことも十分に考えられる。特にチャーリーとの激突は、いわば“ニューヨーク対決”になるだけに、理に適うカードと言える。

 また、IBF王者のカルロス・モリーナにはサウル・“カネロ”アルバレスとの対戦の噂があるが、それが流れた場合には別の相手を探すはず。いずれにしてもチャンスは数多くは巡って来ないだろうだけに、中屋一生プロモーターをはじめとするジム側の交渉力とバイタリティも問われてくるはずだ。

チャーリーが勝ち名乗りを受けるシーンがアメリカの舞台で近々、再び見られるか。Photo By Kotaro Ohashi

 そして、もしもエリミネーションバウトが組まれたとして、よりレベルが上の相手に、チャーリーは前戦と同じか、それ以上の成果を示さなければいけない。負けは論外、苦戦も駄目。より分かり易い形で、ファンやテレビ局にアピールする内容で、自身の価値をもう一度誇示しなければならない。それらのすべてを成し遂げられたとき、チャーリーが夢見たタイトル挑戦はようやく現実のものとなるのだろう。

 リング外では子供のような笑顔も見せる東洋太平洋王者だが、もう32歳。残された時間は多くない。恐らくは、あと1年、長くて2年が正念場となる中で、チャーリー太田と中屋ジムは最後の階段を昇ることができるだろうか。

 レールのない道を歩むのは簡単ではないが、それゆえに興味深く、成し遂げられた際の喜びも大きい。スリリングな予感とともに、ニューヨーク産、日本経由の物語のクライマックスまで、あと僅かである。

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール>
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを 中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の 媒体に記事、コラムを寄稿している。
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