――「ウソをつかないようにしている」とは?

渡邉 グーグルが手心を加えて、場所をずらしたり、都合の悪いビルを塗りつぶしたりすることも可能でしょうが、いまの仕様だとかえって目立ってしまうので、自浄作用が働いている、その意味で、インターネット上のプラットフォームのあるべき姿をあらわしている気がします。僕たちが歩いている地球をできるだけ忠実に再現しようとしているプラットフォームで、現時点でいちばんよくできているものだと思います。でも、もっとできのいいプラットフォームが出てきたら、たぶん未練なく乗り換えます。いまグーグルアースに載せているデータは、時間と空間の情報をつけただけのものなので、プラットフォームを乗り換えるのは簡単なのです。
――そういえば、本の中では時間・空間情報についても触れられていて、「時空間メタデータは、社会的・政治的な立場とは関わりを持たない、ある意味フラットな、公平なものです」と書かれていますね。
渡邉 そうですね。メタデータとは、データを説明するためのデータという意味です。
将来、社会や歴史認識がもし大きく変わることがあったとしても、この時空間メタデータが変わることはありません。
さまざまなデータを、ウソをつかない時空間メタデータにしたがって、仮のもうひとつの地球、いわば「どこにも帰属しない場所」に保管しておく。トップダウンの視点から消そうとしても、簡単にはできないような仕組みにしておく。それが僕たちのつくっているデジタルアーカイブです。そのことによって、すべての資料に特定の重みをつけずに、見る人に自由な解釈の許すかたちで提示していけるのではないでしょうか。そしてそれが、いまの時代において「データを紡いで社会につなぐ」ことになるのではと思うのです。