データを社会に活かすためのヒント
『データを紡いで社会につなぐ』著者インタビュー「ナガサキ・アーカイブ」「ヒロシマ・アーカイブ」「東日本大震災アーカイブ」。これまでにないかたちの「デジタルアーカイブ」が、各方面で、いま、注目を集めている。戦争や大災害の記憶を、時代を超えてどのように伝えていくのか。これらの制作を中心になって進めてきた渡邉英徳氏に、初めての単著『データを紡いで社会につなぐ』(講談社現代新書)について話を聞いた。
「新しいデジタルアーカイブ」とは
――『データを紡いで社会につなぐ』という書名は、少し変わったタイトルですね。
渡邉 そうですね。最初の仮タイトルだったのですが、自然にそのまま書名になりました。僕のやってきたことは、ひとことで言うとそういうことかな、と思ってつけました。
――「東日本大震災アーカイブ」「ヒロシマ・アーカイブ」など、これまで多くの「デジタルアーカイブ」を制作してきましたが、そもそも、渡邉さんのデジタルアーカイブとはどんなものなのでしょうか?
渡邉 ひとことで言えば、「インターネット上や、現地の資料館などあちこちにあった資料を集めてきて、それらを、グーグルアースというグーグル社の提供している仮想のデジタル地球儀に載せたもの」です。
ふつうのデジタルアーカイブでは、資料が、大分類から細かい分類へと枝分かれになった構造で整理されているのですが、僕のデジタルアーカイブは少し違っています。
おおざっぱに言うと、たとえば学校のクラスの名簿をつくるとき、ひとりひとりの名前をポストイットに書いて地図の上にぺたぺた貼ったような感じのものです。これだと、お菓子屋さんの近くに住んでいるのがAくんとBさん、CさんとDくんは近所だというようなことがすぐわかりますよね。資料同士の関係がなんとなくわかるし、ひと目で全体も見られる、さらに人それぞれの見方ができる。それが僕たちのアーカイブです。
――僕たちというのは?
渡邉 僕はあくまでアーカイブの設計と技術担当で、資料を提供・収集してくださっているのは、地元の方々や団体などだからです。また、大学の研究室のメンバーにも制作に加わってもらっています。