松尾貴史(以下、松尾) 原島博先生は顔学を研究されているそうですが、顔学とはどういったものですか?
原島博(以下、原島) そうですね。顔学では、誰もが持っている顔というものをさまざまな角度から研究しています。もともと僕の専門はコミュニケーション工学、昔でいうところの通信だったんですね。今からもう25年ぐらい前の1985年頃、当時僕はテレビ電話の研究をしていたんです。チャット技術の研究ですね。
岡村仁美アナウンサー(以下、岡村) はい。
原島 そして、テレビ電話というのは、技術的にはわりと簡単なんだけど、なかなか普及しないんですよね。今でもあまり使わないでしょう? どうしてだろうと考えたときに「顔が、重要だな」と。テレビ電話でありのままの顔を送るよりも、実物よりもいい顔に映るテレビ電話があるといいんじゃないかと・・・。
松尾 今、プリントシール機で撮影すると、目がちょっと大きくなったり、顔全体が締まって見えるような、被写体が自然と美男美女になるような細工が施されていますよね?
原島 そうです。それらのルーツかもしれない技術の研究を、25年前にはじめたんです。
松尾 四半世紀前に、そんなことをやろうとしていたということがすごいですね。いわゆる人相学とはまったく別の観点から、顔を研究しようということですもんね?
原島 そうですね。たしかに顔学というと人相学と間違えられる。でも、人相学は、ある意味では占いです。その顔を見て、その人の性格や運命を当てたりするのが人相学。
それに対して顔学というのは、基本的には科学。ですから心理学や人類学、解剖学、そして僕みたいにコンピューターを使って顔画像処理をする人間、そんな、いろんな分野の専門家が集まって、さまざまな視点から科学的に顔を研究しようというのが顔学なんですね。
たとえばある顔を見たときに、それを見たほとんどの人が「この人はのんびりしていそうだな~」と思うとすると、その顔に「のんびりしている」と思わせるなにかがあるわけですよね? そのなにかを、統計的、科学的に調べるのが顔学です。そのとき、本人の性格がほんとうにのんびりしているかどうかは関係ないんですね。