11月7日、ECB(欧州中央銀行)は、予想外に政策金利を0.25%引き下げることを決定した。今回の利下げは、今年5月以来2回目となる。ECBが、どこかで利下げに動くとの予想はあったものの、11月に実施したことは金融市場に意外感を与えた。
ECBが利下げを決定した背景には、10月のユーロ圏内の消費者物価上昇率が0.7%と、ECBが目途とする2%を大きく下回ったことがある。ここまで消費者物価の上昇が低くなると、いずれデフレ懸念が台頭することも懸念される。
ECBとしてはデフレ懸念が台頭する前に金利引き下げを行うことで、デフレに先手を打つ意図があったと見られる。
今回の措置によって、既に為替市場でユーロが弱含みに展開にあるなど相応の効果が顕在化している。
ユーロ圏諸国全体を見ると、ドイツを中心に最悪期を脱したとみられる。
ただ、各国の経済状況を分析すると、大きな"ばらつき"があることが分る。ギリシャ経済は回復しつつあると言っても、追加支援策が必要になることは明らかだ。
ポルトガルやスペインなどでは、不良債権処理が大きく進んでいるようには見えない。来年、ECBがユーロ圏諸国の銀行の資産査定を行うことになっているが、いくつかの銀行は健全性に疑問符が付くとの見方が有力だ。
ユーロ圏諸国の中には、大規模な不動産バブルの後始末が終了していない国があり、それらの国がユーロ圏全体の景気回復の足取りを重くしている。
その為、物価上昇率が大きく低下して、いずれデフレ懸念が台頭することも懸念されるのである。
もう一つ無視できない要素は、足元でユーロ高が進んでいたことだ。ユーロが強含みになると、ユーロ圏の輸出企業には大きな逆風になる。特に、輸出依存度の高いドイツの企業にとって、最近のユーロ高はかなり重荷になったことだろう。