[障害者スポーツ]
伊藤数子「ボランティアを“する側”と“される側”という図式の存在」

誰にでもある“できること”“できないこと”

スポーツ大会には、選手以外にもさまざまなかたちで参画することができる

 さて、話を今年の全スポに戻します。前述した通り、今回は20歳以上という条件のみでボランティアの募集をしたところ、48名の応募がありました。その中には障害のある人も3名いたのです。そのうちの1人、大東文化大学4年生の石渡康大さんは、今回の応募を見て「やっとチャンスがきた!」と思ってくれたそうです。

 石渡さんは脳性まひで、車椅子を使用しています。彼は特にスポーツに興味をもっているわけではありませんし、スポーツ経験もほとんどありません。ですから、石渡さんにとってはスポーツのイベントでなくても良かったのです。とにかく彼はずっと何か社会と関わることをしたかった。ボランティアもしてみたいと思っていました。しかし、障害のある人を対象にボランティアを募集することはなかなかありません。彼にはボランティアをするという選択肢はどこを探してもなかったのです。

 そんな時に今回の募集を知り、驚くと同時に「ついに来た! 待っていたこの機会に飛び込もう!」と嬉しくなり、すぐに応募してくれたのだそうです。実際、石渡さんをはじめ、障害のある3人の人たちは、大いに力を発揮してくれました。その仕事ぶりは、他のスタッフと何ら変わりありません。

 もちろん、彼(女)らにできないこともあります。例えば車椅子の石渡さんには試合の現場での撮影は難しい。しかし、それは健常者でもパソコンに弱い人には編集作業は難しいのと同じことです。誰にでもできることと、できないことはあります。だからこそ、できることで力を発揮すればいいのです。そこに障害の有無は関係ありません。

 今回のことを通じて、障害のある人が競技としてスポーツをする、そしてボランティアという立場で大会の運営を支えるなど、参画の仕方にはさまざまあり、障害者あってもなくても、関わり方は多様であることを教えてくれました。7年後の東京オリンピック・パラリンピック開催時には、障害のある人にもボランティアをする選択肢があることが常識となっている日本社会にしたい。そのために私たちにはやるべきことがたくさんある、と改めて使命を感じました。
 

伊藤数子(いとう・かずこ)
新潟県出身。障害者スポーツをスポーツとして捉えるサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。1991年に車いす陸上を観戦したことが きっかけとなり、障害者スポーツに携わるようになる。現在は国や地域、年齢、性別、障害、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するため の「ユニバーサルコミュニケーション活動」を行なっている。その一環として障害者スポーツ事業を展開。コミュニティサイト「アスリート・ビレッジ」やインターネットライブ中継「モバチュウ」を運営している。2010年3月より障害者スポーツサイト「挑戦者たち」を開設。障害者スポーツのスポーツとしての魅力を伝えることを目指している。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。