ハード・ノンフィクションの巨匠、溝口敦著 『溶けていく暴力団』
第三章「飛んでる半グレ集団」全文公開!

修正不能な分裂

関東連合の転機となったフラワー事件はいってみれば、大失敗した仇討ち物語と括れるにちがいない。

話が前後するが、一三年七月、元関東連合幹部の工藤明男氏(筆名)がフラワー事件に触発された形で告発書『いびつな絆 関東連合の真実』を刊行した。この本の刊行で関東連合が外部からも明白に分かる形で分裂したこと、同時に内部情報を明らかにすることで分裂がもはや修正不能であることが明らかになった。

工藤氏はフラワー事件の後、「関東連合を一刻も早く解散させたい」と願い始めた。彼の立場は関東連合の中でも少数の良識派に属する。多数派はフラワー事件でフィリピンかペルーに逃亡している見立真一容疑者(事件時三三歳)が率いている。

見立容疑者は海外からの電話で日本在住のメンバーを遠隔操作し、「裏切り者の工藤氏や関係する女を殺せ」と命じている。警視庁は『いびつな~』の刊行に前後して最寄り署を通じ、工藤氏を保護対象とした。

工藤氏はかつて芸能プロダクションや投資会社、コンサル会社などを経営していたが、役員に名を出せば商業登記から住所が割れ、見立容疑者による攻撃を招く。そのため、会社の役員をいっさい辞任し、単に株主として配当を受ける生活に入ったと語っていた。彼が望めばの話だが、今後、成功した事業家として一般社会に溶け込んでいくことも可能だろう。

暴力団と半グレの距離

他方、見立容疑者が逃亡生活を続けるためのカネはメンバーが手持ちで現地に届けているようだ。用心深い見立容疑者は「足がつく」からと、カードや銀行口座への振り込みをいっさい利用していない。

工藤氏によれば、半グレ集団としての関東連合は一九七八年生まれの世代を最年長に、八三年生まれの世代までの六世代のみを「自分たちの関東連合」と考えているという。

つまり二〇一三年を基準に考えれば、関東連合のメンバーはほぼ三〇~三五歳の世代に限られることになる。

〈六本木「フラワー」の事件(後述)を首謀して海外逃亡している見立(真一)君は、S五四年(一九七九年)生まれだが、早生まれだから学年で言えば最年長のS五三年生まれの世代であり、その世代の総長(リーダー)だった。海老蔵事件以降にタレント活動を始め、たびたびマスコミに登場するようになった石元太一はS五六年生まれのリーダーだ〉(工藤前掲書)

本書でも以後この狭義の「関東連合」を使うことにする。
主流の見立派と工藤氏など良識派のメンバー比は五対一で、良識派は圧倒的に少ない。

誤爆事件では見立容疑者が近年最大の資金源としていた百井茂被告も逮捕されたため、見立容疑者の逃亡生活が資金的にいつまで維持できるか、大いに疑わしい。見立容疑者が逮捕、国内送還になれば、関東連合の暴力派は根こそぎ収監か入獄する状態になり、実質的に壊滅する。

告発者の工藤氏は六本木誤爆事件は取り返しのつかない誤りと考えている。見立容疑者も悪あがきせず、帰国して誤爆事件を主導した罪を償(つぐな)うべきだ、と。

『溶けていく暴力団』
著者:溝口敦 定価882円(税込)
 
◆内容紹介
大ベストセラー「暴力団」「続・暴力団」を手掛け、講談社+α文庫の闇モノシリーズは累計60万部に達する巨匠・溝口敦が、自身、「最後の闇モノ」として望む、「裏社会の今」を暴く決定版。衰退する暴力団の現状と今後、半グレ集団などの因習にとらわれない新たな暴力の実像と展望、そして、われわれ市民社会が、溶けるように私たちの生活に食い込んでくる暴力の兆候、背景をどう見抜き、どう対処すべきかを綿密な取材と、豊富な見識から説く。
 
 
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