アップルのiPhoneが出現して6年。それまで全盛を誇っていたノキア(Nokia)がマイクロソフト(Microsoft)に買収されるなど、大手携帯電話業界の再編が進んでいる。アップル(Apple)が確立したコンテンツからディバスまでの「垂直統合モデル」を追って、グーグル(Google)はモトローラ(Motorola)を、マイクロソフトはノキアを傘下にいれた。もはや、独立系大手で健在なのはサムスン電子(Samsung Electronics)のみ。
そうした中、スマホのパイオニア、ブラックベリー(BlackBerry、本社カナダ)の買収が白熱している。米国の映画・テレビ業界がディズニーなどのハリウッド・スタジオを頂点に系列化したように、いまモバイルの世界でも系列化の動きが活発化している。今回は、ブラックベリー買収劇を追いながら、系列化が進む大手携帯ベンダー業界を追ってみたい。
10月24日、米国のメディアに「ジョン・スカーリー氏がブラックベリー買収に関心を示している」という観測記事が飛び交った。スカーリー氏はコカコーラのトップ・エグゼクティブとして敏腕を振るった。その高いセールス力を見込まれ、故スティーブ・ジョブス氏がアップルに引き抜いたが、その後ジョブス氏をアップルから追い出して自ら最高経営責任者になった人物。それだけに"ブラックベリーを愛用している"同氏の名前だけで大手メディアが反応した。
スカーリー氏が本当に乗り出すかは定かではないが、現在ブラックベリー買収を狙っているのはフェアファックス(Fairfax Financial Holdings)を筆頭にサーベラス(Cerberus Capital Management)や中国レノボ(Lenovo)など4~5社と言われている。買収提案の期限は11月初め。それを前にブラックベリー争奪戦は過熱の様相を見せている。
欧米におけるスマホのパイオニアといっても、日本ではブラックベリーの知名度はほとんどない。そこで簡単に同社の説明をしておこう。
同社の前社名はリサーチ・イン・モーション(RIM、Research In Motion)。1984年にカナダのオンタリオ州に設立された。同社はポケベルの愛称で親しまれたワイヤレス・ページャーからスタートし、1990年代に電話とテキスト・メールを統合したコンセプト「ブラックベリー」を生み出した。
90年代後半から2000年初期、RIM社のブラックベリー端末は企業向けのスマートフォンとして、政府や大手企業がこぞって導入した。そのビジネス・モデルは専用メッセージ・システムとブラックベリー端末を組み合わせた法人向け垂直統合モデルだった。高いセキュリティ機能を誇るメールシステムやミニ・キーボード、ページを操作するホイールなど、ユニークな機能で人気を博していた。