池上彰×津田大介 【第3回】SNS時代のメディアの役割と「ポリタス」が変える政治の未来

共著『メディアの仕組み』記念対談

ネット選挙運動解禁は参院選に合っている

津田: そういうことで考えると、ちょうど今政治の話も出ましたが、ついに今度の参議院選挙からネット選挙が解禁されるわけですが、僕のほうから意見を言わせていただいてよろしいですか?(笑)

池上: どうぞどうぞ、ここからは攻守所を変えてね(笑)。今日はなんでこんな話をしているかというと、多分「政治メディアのポリタスをスタートさせたんですよ」という話に持っていきたいんだと思いますから(笑)。

津田: あとでその画面も見ていただきたいと思っているんですが、僕はネット選挙を解禁することのメリットというのは、有権者と候補者の両方にあると思っていて、今は有権者のほうは政治に興味が一番増えてくる時期です。24時間365日政治のことを考えている一般の有権者はあまりいないわけですが、ただ少なくとも選挙期間くらいは政治のことも考えようという人も増えると思います。そのときに、候補者の名前を検索してもあまり情報がないという状況が改善されるのは良いことで あろう、と。

今までは候補者のポスターの見た目とか、もしくは○○議員は挨拶してくれたとか、握手してくれた、汚れるのも厭わずに田圃のなかまで来てくれた、みたいなところで選んでいたわけですが、それよりももうちょっと政策なども含めたところで選んだほうがいいんじゃないか、と。あとは、若者の投票率がちょっとでも上がればいいな、というところが期待として一つあります。

それと、候補者にとってみたら、もう少しネットを使うことによって、今までだったら結局握手とポスターしかなかったという状況だったのが、もう少し情報リテラシーが高い層には政策を訴えることで票につながっていくんじゃないのか、もしくは個人献金が集められるんじゃないのか、ということがあると思うんですね。

それからもう一つは、いわゆる「選挙の三バン」と言われている「地盤・看板・鞄」のような、組織力だったり知名度だったり資金力だったりというようなものに頼らず、「ポスターも貼らないし選挙カーも出しません、自分はネットだけでやります、その代わりマイノリティを代表してこの人たちの権利を守りますので、皆さん3万票ください」みたいなことを言うと、参議院の全国比例区だったら3万票は多分とれるんじゃないかな、と。

この前の参議院選挙のときには3~5万票くらいが、どこかの党に所属していると当落ラインで、たとえばみんなの党だと2万7千票くらいで通っているので、そうすると、「自分はLGBTの人たちの権利を守ります」と言って、どこかの党から出て2万数千票を集めたら、今までの組織力・知名度・資金力とは 関係ない議員が誕生するんじゃないかな、と。実はそこがネット選挙を解禁することのいちばん大きな突破口となるんじゃないかと思っているんです。

池上: なるほどね。今の話で言うと、これは衆議院では通用しない話なんですよね。参議院の全国比例区だから、全国からそういう少数の意見を集めることによって、何万票か確保して当選することができる、と。今の話から言うと、参議院選挙ではネット選挙がピッタリということですね。

津田: そうですね。そこが今回解禁されたのが参議院選挙だったのはよかったな、と思っていて、実は1人出ているんですよね。いわゆる世間的な知名度はなくて、田宮嘉一さんという人だったかな。

池上: 選挙はもう公示になっているので、あんまり特定候補の名前は言わないほうがいいですよ。

津田: ああ、いや大丈夫ですよ、別に応援するとかじゃないですから。田宮さんという人は、元々全然有名な人じゃなくて企業の社長さんなんだけれども、政治家になりたいと思ってずっとTwitterをやり続けていて、今はもうフォロワーが30万人くらいに増えたんですね。それで、今回ある党から出て全国比例区から出馬するということをやっていて、ああいう30万人と交流している人がもしも何万票かとって議員になったら、けっこうこれは新しい事例になるんじゃないかと思って注目しているんです。

池上: 新しい選挙の力が出てくる可能性は非常にありますね。とくに組織をバックにしていないということはとても大事ですよね。