池上彰×津田大介 【第3回】SNS時代のメディアの役割と「ポリタス」が変える政治の未来

共著『メディアの仕組み』記念対談

「ぶっちゃけどうなの?」で本音を引き出す

津田: まさにそこで質問力というか、記者の腕が問われると思うんですが、池上さんはそういう、形式的なことしか言わないような人から本音であるとかあえて隠して発表しないようなことを引き出すためにはどういうテクニックで質問して本音を引き出しているんですか?

池上: それは、相手がいやがる質問をするってことですよ(笑)。政治家で言えばね。日頃は「ぶっちゃけ」というようなカジュアルな言葉は使わないようにしているんですが、こういう場だからいいですよね。だから、「ぶっちゃけどうなんですか?」という形で質問していくってことですね(笑)。

津田: それはもう、明らかに、そういうふうに言うと相手もけっこう動揺したりするものですかね?

池上: たとえば月間文藝春秋で、参議院選挙を前に私が各党の党首にインタビューしているんですね。そのやりとりが一問一答の形でずっと出ています。たとえば、公明党の山口那津男代表に、「公明党としてどう戦うんですか」みたいな形で質問するでしょう。

そうすると、「私たちは国民の目線でやっていきます」みたいなことを言うわけです。そこで「そうすると、自民党と連立を組んでいるということは、自民党は国民目線じゃないんですね?」と言うと、山口さんは絶句するわけですよ(笑)。「うーん、そういうことは言えないし・・・」みたいな、そこで本音が出てきたりするわけですよね。

津田: それは、党は党で公約がある、と。でも連立を組んでいるとか、もしくは今まで言っていることと投票行動が違ったりというようなところでの矛盾というのが生まれてくるわけですよね。その矛盾を指摘するということが重要ということですね。

池上: たとえば、日本共産党の志位和夫委員長にインタビューすると、今の日本のブラック企業の批判をするわけですね。「いとも簡単にみんな首を切られてしまうけれども、ドイツを見ろ、ドイツの企業を見ろ、シーメンスを見ろ、こうやって労働者の権利を守ろうとしているんだ」という話をするわけですよ。

「あれ、資本主義のドイツの企業がちゃんと労働者を守っているという話を共産党がするって、これはヨーロッパ型の社会民主主義ですよね? いっそのこと共産党と言わないで社会民主党という名前にしたらどうですか?」と言うと志井さんが苦笑いをするわけですね(笑)。

「いやいや、社会民主主義というと資本主義の枠内での改革だけど、共産党はそもそも資本主義を否定しているんだからこの名前を保っているんです」と言うから、ああ、だからこの名前を使っているんだ、ということが実はわかったりするわけですね。そういうふうに、相手が苦笑いをしたり絶句したりするような質問をすることによってちょっといろいろなことが出てくるのかな、と思います。

津田: なるほど。そういう駆け引きをするというのは、池上さんはディベートの訓練をされたことがあるんですか?

池上: 一度もありませんよ。

津田: そうですよね。でも、ディベートするわけじゃないんだけれども、知識とか背景情報があると、そのこと自体が質問につながってくるわけですね。

池上: それはディベートではないわけですよね。だから、たとえば共産党がドイツのシーメンスの例を出したりすると、ヨーロッパの社会民主主義政党のことをある程度知っているからこそ、それに突っ込めるわけですね。そういうものをどこまで持っているかということだと思います。

津田: 「そういう厳しい質問をすると、あとから嫌がられて取材拒否をされたりするんじゃないか」というコメントがあったんですが・・・。

池上: いいじゃないですか、別に(笑)。私はかまいませんから。