『臨時軍事費特別会計』著:鈴木晟
二人の〝山本〟へのオマージュ

その山本の昭和史に関する言論で、筆者が特に刺激を受けたのは「日本には大戦原因論は多いが敗戦論は少ない」との指摘だった。

両山本が某週刊誌で一週毎に交替してコラムを連載していたことがあった。そのリレー・コラムで記していたと記憶している。前後の文章をすっかり忘れてしまったが、とにかくこの言葉が持つ意味を筆者は〝電光石火〟理解した(分かるというのは電光石火のもので分からない人間は百万言費やしても分からないと、山本はよく言っている)。

それで大学のゼミで紹介したが、教授もゼミの同輩もまったく興味を示さなかった。興味を示したのは他大学から出講してきていた、日本外交史を専門とする教授で、ひとこと「至言ですね」ともらしたのが強く印象に残っている。

なぜ敗れたのかを研究すれば、逆にたとえば原因論であれこれ軍人を批判するよりはよほど彼らの酷さ愚かさの実態を明らかにできると思われるのだが、今も依然として原因論の類が多く(拙著も屋上屋を架すようなもので恥ずかしい限りだが)、日米開戦に異を唱えた軍人を賞揚するというパターンが繰り返されて出版界を賑わせている。

おそらく、筆者はこれからも学者研究者ではない二人の〝山本〟の著作を足下の明かりにして昭和の歴史を書いてゆくのであろうと思っている。先に師はいないといったが、その意味で、前言を翻さなければならない。

(すずき・あきら外交史研究家)

 
◆内容紹介
統帥権、軍部大臣現役武官制だけが国家を滅ぼしたのではない!!カネと国民の支持がなければ戦争はできない。十五年にわたる戦費調達のからくりを明らかにし、軍部、産業界、議会とメディアの関係を抉り出す。
 
鈴木 晟(すずき・あきら)
宮城県石巻市出身。石巻高等学校、早稲田大学法学部卒業。同大学院修士課程修了。以来、現在に至るまで外交史・日米関係史の研究に従事。「1850~1920年代におけるアメリカの東洋移民排斥」(『アジア研究』第34巻第3号)、「日本戦時経済とアメリカ」(『国際政治』第97号)、「日本人の対外イメージについての一考察」(『外交時報』第1302号)ほか多数の論文を発表している。著書に『面白いほどよくわかる世界の王室』(日本文芸社)、『面白いほどよくわかるアメリカ』(共著・日本文芸社)などがある。都内・近県の大学で外交史・日米関係史を講じた経験をもつ。現在は、大学受験予備校で「世界史」の教育にたずさわっている。