新米の季節である。
この時期は、日本料理店に出かけるのがうれしくなる。ことに最近の日本料理店は、コースの最後に、注文してからご飯を炊いて出してくれる店が増えてきた。
恐らくこれを最初にやりだしたのは、京都の『草食なかひがし』ではなかったかと思うが、この店の反響がすさまじく、そうしたスタイルの店が増えてきたのではないかと思う。一方で、お米を料理の中心におき営業する店も2008年ごろから増えだした。居酒屋もしくは小料理屋の様式を持ちながら、最後に炊きたてのご飯を提供する店である。
いずれも都内に数十店舗あるが、そうした店の中でご飯に特化した、面白い店を紹介したい。代々木上原『おこん』である。
『おこん』は近所に店がない、住宅街の中にひっそりとある。小体な店内で、切り盛りするのはご主人1人だけだ。数々の日本料理店で修行なさったご主人が、ご飯に特化しようと思い、自宅を改造して開いた店である。
料理はコースのみ。上品に味付けされたおから、出汁が染みてしみじみうまい野菜の炊き合わせ、締め具合のいいコハダ刺しや、雲丹の刺身、ビーフカツなど、6品が出されたあとにご飯となる。
ご飯は、季節の炊き込みご飯、もしくは白いご飯となるが、それは決まっていない。予約の際に、その日の気分、体調、好みなどを店主に伝えて相談するのだ。店主は3種ほど用意した米から、そのオーダーにあわせて選び、特注の土鍋で炊き上げる。