「1億円は貯められる。月5万円の積立で。」---。
このインパクトある広告を打っていた投資顧問業者のアブラハム・プライベートバンクが、金融庁の「業務停止命令」を受けることになった。
証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反を認定して金融庁に行政処分を勧告。それを受けての処置だが、アブラハムも「勧告受け入れ」を表明した。
アブラハムは、ネットはもちろんテレビ・新聞でも積極的に広告を打ち、「いつかは ゆかし」を取り上げるマスコミも多いことから、業務停止命令の波紋は大きい。
「同じようなサービスは、いろんな金融仲介業者が行っていました。要は、英系金融機関が行っているオフショア積立投資です。日本の投信は安定的ですが面白味がない。そこで、世界を見渡しながらハイリターンを狙うファンドに投資しよう、という金融商品でした」(金融業界関係者)
このサービスは、以前からある。
ただ、オフショアファンドへの投資なので、口座を香港の金融機関などに開設、諸手続きは英語で行わなければならないなど、面倒だった。
それを、日本にいながら煩雑な手続きのサポート受け、「月5万円で複利の長期運用(25年~30年)で1億円貯められる」というのが、アブラハムの"売り"だった。
アブラハムの広告と記事の効果は抜群だった。
アブラハム自身の投資助言残高が、右肩上がりなだけでなく、同種のサービスを手がけている業者も、「アブラハム効果」で顧客を増やしていった。それだけに、海外積立投資全体が冷え込む可能性が高い。
アブラハムもそうだが、投資助言はひとつの金融商品を推奨してはならない。
あくまで顧客の側に立って、その目的に沿った助言を行う。そこで、対面やスクール方式の投資助言が中心となる。アブラハムの広報戦略に同調するように、海外投資セミナーを開く業者が増えた。