いま、日本で最高の役者かも
何でも面白くしちゃう香川照之(大和田常務)という男、その内実

週刊現代 プロフィール

「『坂の上の雲』では、闘病中の子規が3年ぶりに帰郷した親友の秋山真之(本木雅弘)に『よう帰ってきたのぉ』と語りかけるシーンがあった。さりげないながらもすごく温かい話し方で、その言葉を受けた本木さんの表情がさーっと変わっていったんです。香川さんの演技に打ち込む姿勢は、ほかの共演者にも間違いなく伝染していくのです」(前出・柴田氏)

彼が出演することで、作品が盛り上がる—その演技力だけでなく、香川が最高の役者と評価される理由は、まさにここにある。

今回の『半沢直樹』の現場でも、こんなことがあった。森田順平氏が明かす。

「僕が料亭のシーンでお酒を注ぐタイミングを間違えたことがあったのですが、後で香川くんから『あそこが良かったですね』と言われました。相手の演技が変わっても、それを面白がって自分の演技に利用する。香川くんが相手だと役者は本当にやりやすいんですよ」

視聴者だけでなく、スタッフまでも虜にする役者・香川照之。役者デビューから20年以上経ったいま、俳優としての地位は揺るぎないものとなったが、ここにきて、あるプレッシャーが彼に襲い掛かっている。歌舞伎役者としての評価だ。

これまで距離を置いていた歌舞伎界に入る決断をし、2011年秋、九代目市川中車を襲名した香川。そのことを快く思っていない関係者は少なくないのだという。ある歌舞伎関係者はこう声を潜める。

「歌舞伎は子どもの頃から鳴物や踊りなどさまざまな稽古を重ねて、ようやく一人前になれる世界。それが突然入ってきて舞台に上がるのですから、『歌舞伎はそんな生半可なものではない、〝中車違反〟だ』などと彼を揶揄する人もいます」

通常、御曹司であっても名題試験に合格し、長い修行を経てはじめて一人前とみなされる。一方の香川は、市川中車の襲名直後に幹部待遇となり、初公演では主役を務めた。二代目市川猿翁を父に持つとはいえ、異例の扱いに違和感を抱く者がいるのはやむを得ないことかもしれない。

歌舞伎界では意外な評価

それでも、周囲をうならす力量があれば批判の声も収められるというもの。しかし、彼には決定的に不足しているものがあった。前出の関係者が続ける。

「なんといっても声ですね。昨年の夏の舞台『将軍江戸を去る』は、対話劇で台詞がかなり多かったのですが、最後のほうには声が嗄れてかなり苦しそうでしたから」