今日10月1日に、安倍首相は、来年4月から、予定通り消費税を8%に増税することを正式に決定する。そして、5兆円規模の経済対策も発表する。最大のポイントは、その政策の目的を国民にしっかりと説明できるか否かである。
まずは、デフレ克服という目的を達成するために、増税がマイナスにならないと言い切れるかどうか。日本のGDP500兆円の6割の300兆円が、個人消費である。消費税増税は、当然消費を抑制することにつながる。5兆円、つまり消費税2%分に相当する支出を行うのなら、1%だけの増税にとどめればよいはずである。しかも、3%は、社会保障の充実のために使うべき約束だったはずである。
企業と個人が対立するものではないにしろ、企業向けの減税が従業員の給料を上げることにつながらなければ、政策の効果は出ない。年金生活者にしても、物価スライドの実行で、年金は減っていくし、社会保険料は増えていく。
そうなれば、ますます消費を控えることにならないか。高齢者の不満の声が聞こえてくるであろう。従業員の給料を上げた会社には、法人税を減税すると言っても、経営者はそのような餌には容易に食いつかないであろう。配当、投資、内部留保などが先で、給料アップは最後になる。給料を上げれば、企業の社会保険料も上がる。経営者の判断は、そう甘くない。
民間の給料が減っている大きな原因は、派遣労働者の増加である。今でも、派遣労働者が全体の労働力に占める割合は増えている。経営者にとっては、固定費、とくに人件費の負担を下げることが、グローバルな競争に打ち勝つためにも重要な課題となっている。そのような中で、雇用の問題に正面から取り組まないかぎり、アベノミクスの成功はない。
雇用に関する特別区を設けるのは結構だが、「首切り特区」と揶揄されるような特区ならば、企業の論理に立つだけで、結局は企業の首を絞めることになる。経営資源のうちで最も重要なのが人である。雇用形態の自由化、柔軟な雇用などと言えば、聞こえはよいが、働く者の生活の安定を阻害するというマイナス面はないのか。