9月16日現在(以下同)、楽天は2位・千葉ロッテに7ゲーム差をつけ、球団創設以来初の優勝へひた走っている。
このところ、やや調子を落としているものの、チーム最高打率をマークしているのが銀次である。3割1分4厘。6月から3番に座り、チームを牽引した。
東北(岩手)出身で、しかも生え抜き。今季、めきめきと頭角を現してきた〝星野チルドレン〟の代表選手だ。
「アイツは常に前向きなところがいい。周囲から〝監督は我慢して使っていますね〟とよく言われるんだけど、こっちを我慢させる何かをアイツが持っているということですよ」
普段、めったに選手を褒めない指揮官の星野仙一が、銀次の話になると珍しく頬を緩めた。
「実は最初の構想では5番。AJ(アンドリュー・ジョーンズ)とケーシー・マギーの間を打たそうと思っていた。ところが(3番に起用した)聖澤諒が急にヨソ行きのバッティングを始めたものだから、〝これはアカン〟と思って銀次を3番に抜擢したんです。
アイツの最大の持ち味は何番を打たせても、自分のバッティングを変えないところ。自分の能力が分かっているんでしょう。それにバッターボックスからベンチに〝気〟が伝わってくる。特にベンチが一塁側の時は、背中が見えるので余計にそう感じるのかもしれない」
銀次は岩手県下閉伊郡普代村の出身だ。本名は赤見内銀次。Vシネマにでも出てきそうな名前だ。そう言えば『実録・夜桜銀次』なんて任侠映画もあったっけ。
名前の由来は?
「名付けたのは母です。銀の次は金。縁起がいいということで……」
母子家庭だったこともあり、苦労をかけた母親への思いはひときわ強い。