岩手が生んだ天才バッター、銀次。本人は「まだまだあまちゃんです!」とおどけるが、今季の活躍には誰もが「じぇじぇじぇ」と驚いた。球団史上初の優勝へ。地元の星は一直線に突き進む。
狙った獲物は逃さない。この夜も銀次(25歳)は手練れのスナイパーのように一撃で獲物をしとめた。
8月16日、西武ドーム。先発した東北楽天のエース・田中将大には大記録がかかっていた。勝てば松田清(巨人)と稲尾和久(西鉄)が保持する20連勝の日本記録を56年ぶりに更新するのだ。
田中の前にたちはだかったのが埼玉西武の右腕・野上亮磨。この日までに8勝(2敗)をあげていた。
7回が終わって1対1。重苦しい空気が真夏の人工空間を包んでいた。
8回表、均衡を破ったのが銀次だった。1-1からの3球目、内角のストレートを叩くと快音を発した打球は放物線を描き、ライトスタンドに飛び込んだ。
これが決勝点となり、田中は日本新記録の21連勝を達成した。値千金のアシスト弾だった。
「あれは狙って打ちました」
開口一番、銀次は言い、得意満面の表情で続けた。
「ちょっと流れが悪かったので、ここはホームランで(流れを)持ってこようと思ったんです。変化球が来たら、もう仕方がないと割り切り、最初から内角のストレート一本に絞っていました。タイミング的にはドンピシャ。印象に残るホームランです」