[MLB]
佐野慈紀「上原、期待膨らむポストシーズンでの活躍」

スポーツコミュニケーションズ

メジャー式フォームの習得

 日本人投手がメジャーで成功するためには、日本との違いに順応することが不可欠です。そのひとつがマウンドです。メジャーのマウンドは日本よりも傾斜が高く、固い。そのため、日本の時と同じように沈み込むような投げ方では、スピードもコントロールも発揮することができません。それどころか、故障の原因になる可能性が高いのです。

 では、どうすればいいのか。メジャーでは沈み込むのではなく、マウンドに対してドンと当たっていくように投げることが重要です。イメージとしては、マウンドに椅子が置いてあるとします。日本では、この椅子に座った状態から足を上げて投げるのが理想とされています。一方、メジャーでは椅子が踏み出すところに置いてあるイメージです。椅子を前にして立ち、足を上げてそのまま椅子をまたいで踏み込む。そしてドスンとお尻をその椅子に置くようなイメージで投げるのです。上原はそのメジャー式のフォームを習得しているのです。

 逆に、未だしっくりと来ていないのが松坂大輔(ニューヨーク・メッツ)です。現在、2勝(3敗)を挙げていますが、インタビューを聞いても、まだ本人も納得していない様子。今はまだ手先で投げている状態なのです。変化球の曲がりがいいので抑えられていますが、今後はメジャーのマウンドに適したフォームをつくり上げていかなければ、勝つことは難しくなると思います。

 さて、上原がポストシーズンでどんな活躍をするのか、今から非常に楽しみですね。メジャーでのポストシーズンといえば、2年前のテキサス・レンジャーズ時代を思い出す人も少ないかもしれません。タンパベイ・レイズとのディビションシリーズでは第2戦にポストシーズン初登板を果たしたものの、手痛い3ランを浴びました。さらにデトロイト・タイガースとのリーグチャンピオンシップでも2本の本塁打を打たれ、ディビションシリーズから合わせて、ポストシーズン史上初の3戦連続被本塁打という記録をつくってしまいました。

 チームはワールドシリーズに進出したものの、上原はメンバーから外れ、最高の舞台でマウンドを踏むことができなかったのです。その時の悔しさを上原本人も忘れてはいないはずですから、今回は心の奥では並々ならぬ闘志を燃やしていることでしょう。その時の悔しさを晴らすかのようなピッチングを見せて欲しいですね。

 実はこれまでにワールドシリーズでチャンピオンになった瞬間にマウンドにいた日本人ピッチャーは、ひとりもいません。先発では難しいとは思いますが、上原はクローザーを任せられていますから、そのチャンスが巡ってくる可能性が十分にあります。そうした意味でも、今季のポストシーズンは楽しみです。ぜひ、今回は上原の実力を発揮してほしいものです。

佐野慈紀(さの しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商-近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日-エルマイラ・パイオニアーズ(米独 立)-ロサンジェルス・ドジャース-メキシコシティ(メキシカンリーグ)-エルマイラ・パイオニアーズ-オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6 球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。
 
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