MBS(毎日放送)は、9月29日(日)放送のドキュメンタリー番組『情熱大陸』(23時15分~)で、AR(拡張現実)分野の最先端をいく開発ユニット「AR三兄弟」の長男・川田十夢氏に密着、「テレビの未来」という切り口で特集することを発表した。
今回、同番組は川田氏の協力のもと、番組史上初となる独自アプリを開発。去る12日、都内で会見を開き、番組の説明と川田氏によるアプリの一部実演を行った。
アプリ開発の背景について川田氏は、「テレビとインターネット、そしてスマートフォンの特性をぜんぶ使って、現在形で一番面白いことができないかと思って設計した」と説明した。
アプリをインストールすると、番組放送5分前(9月29日23時10分)に、スマートフォンに予告メッセージ(プッシュ通知)が届き、画面に予告編が流れる「番組予告タイマー機能」が起動する。
放送が開始すると、テレビに映る情報がリンク付の文字として時系列にスマートフォンに可視化される「ハイパーリンク文字放送」を体験できる。気になる情報があった場合、その文字をタップするとリンク先に飛ぶ仕組みだ。
最大の見どころは、番組後半で行われる「多視点放送」という実験的な試みだ。今回の放送のために、8月22日に東京ドームで行われたAKB48『恋するフォーチュンクッキー』のライブ映像を16台のカメラで収録。実際の放送では、アプリを通じて、スマートフォンをセカンドスクリーンにして映像が楽しむことができる。
放送中、手元のスマートフォンは、それぞれの映像を16分割の画面で表示する。「スイッチングが多かったテレビの中の視点を変える」と川田氏が話すように、視聴者は自分が見たいメンバーの映像をタップすることにより、そのメンバーの映像だけを見続けることができる。
加えて、それぞれのメンバーの画面がどれだけ見られているか、その総数や上昇率などをリアルタイムで計測し、テレビの本放送にも反映させる(最も多く見られているメンバーの映像を最も大きい画面にする)という新しい試みを行う予定だ。
「テレビと視聴者の間にあるものが時代とともに変わっている。昔はチャンネルをまわすことがテレビの設計だったが、今はリモコンやスマートフォンもある。手元にあるものを全て使った方が面白くなるだろうと思った。若い人たちも多く使うスマートフォンのリアリティの中に、テレビを持ち込んで、そこをつないでいく。これは、10年スパンで考えれば当たり前になる」(川田氏)
番組プロデューサーの福岡元啓氏(MBS)は、「TV番組を録画して観る視聴者も増えてきたが、今回のAKB48との連動は、生放送でしか体験できない。このアプリには、恐らく日本初、もしかすると世界初の機能が備わっている。老舗ドキュメンタリー番組の『情熱大陸』が、最先端の技術とコラボして番組をつくることは新たな実験。ご期待いただきたい」と意気込む。
この、アプリを通じた「可触化+多視点」の放送実験は、「テレビの未来」につながっているのか、注目される。「情熱大陸アプリ」は現在、番組のオフィシャルサイト上で配信されている(iOS版、Android版ともに無料)。
【アプリのダウンロードはこちらから】
http://www.mbs.jp/apps/jounetsu/
取材・文/ 佐藤慶一