古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン動画版Vol.008
「力に力で対抗するよりも、『平和国家、日本』を国際世論で盛り上げ、中国に圧力をかけるほうが得策だ」

古賀 茂明 プロフィール

日本を守れない軍隊は憲法違反?

古賀: それも国防軍をただ保持するだけじゃなくて、日本の国民の安全を守るために国防軍を保持しますと書いてあるわけです。そうすると、日本を守れないような中途半端な軍隊は憲法違反だということになってくるわけですよ。つまり、憲法に書いてあるんだから、中国がどんどん軍備を増強するんだったら、日本もそれに対抗して増強しなければいけないと、こういう理屈になってくるんですね。

たとえば、いま自衛隊がリクルートするのに、だんだん若い人が減っていくので苦労し始めているんです。若い人がいないと。僕が心配しているのは、それじゃあ国を守れないじゃないか、憲法違反だということで、徴兵制にしろというふうに、どんどん拡大していくことなんですね。

ですから、そこらへんを見ていると、安倍政権というのは基本的にいつでも、簡単に戦争ができる国にしたいという、そういう発想が非常によく見えるなという印象です。でも、それを、国民の間でも支持している人がけっこう多いんですよ。

いままで中国とか韓国とかがいろんなことをやっているのを見てもぜんぶ泣き寝入りじゃないかと。馬鹿にされていると。やはり自分の国は自分で守るというふうにならないといけないし、そうなることによって初めてアメリカにもの申すことができる、みたいな考え方をしている人が多いんですけれども、僕は、それはかなり古い考え方だと思うんですね。

憲法の前文というのがあるじゃないですか。いちばん最初の文章ですけれども、その中に非常に大事なことが書いてあります。日本はもう戦争は絶対にしないんだと。じゃあ、どうやって国を守るのかというと、世界の国々も平和を求めているんだから、そういう平和を求める諸国の信義というものにわれわれも信頼を置いて、国際社会の中で、日本は平和国家なんだと、立派な国なんだというふうに尊敬される地位を得て、それによって、みんなが平和をめざそうと言っているんだから、その人たちと協力をして自分の国を守るんですよと、そういう哲学が書いてあるんですね。

それを安倍さんとか、石原慎太郎さんとか、そういう人たちが、こんなのはGHQの押しつけ憲法だと。日本人はさらさら、そんなことを考えたこともないんだと。そんなユートピアみたいなことを言っているから、日本が馬鹿にされるんだと。こういうことを言っているんです。

でも、実は憲法の前文って、いまの状況に非常にマッチしていると思うんですよ。なぜかというと、中国が経済発展して、いまや軍事大国になったと。それで、海洋進出しようとますます軍備を増強しようとしている。こういうふうに来ているわけですね。安倍さんたちの発想は、だからこそ日本はもっと強くならなければいけないと。強く出られるようにしなければいけないと。そうじゃなきゃ中国にやられると。こういう発想なんです。

ところが、いま日本は中国と軍拡競争なんかできるんですか?これは客観的に考えたらできないんですね。経済力がもうまったくないので。中国は経済にいろいろ問題があるとはいっても、成長率が下がるとはいっても、日本よりかなり高い伸び率で伸びていきますよ。

そしたら、日本はもうこれだけ借金も背負っちゃったわけだし、軍拡のために新たに国債発行できるんですかと。そんな国債、誰が買うんですか、というふうに考えたら、中国が大手を振って軍拡に行くという場合に、日本は対抗する術がなくなるんですよ。アメリカもそれをすごく恐れているんですね。アメリカも中国と軍拡競争はやりたくないと。だから、もう仲良くするしかないというふうに思っているんです。

じゃあ、どうすればいいのか。中国の最近の動きを見ていると、やはり世界中から、「あんたは、何でそんなに軍隊を増強するの?」と言われているわけです。それをすごく気にしているわけですね。「いやいや、これは攻めるためではなくて、自分を守るためです」と、ずっと言っているんですけれども、「それにしてもやりすぎじゃないの?」と。こう言われているわけですね。フィリピンとか、あっちのほうでいろいろ問題を起こしそうになって、世界的に「何?」と言われたときに、それを非常に気にして、ちょっと動きを抑えようかなと。

つまり、軍事力で抑え込まれるというよりは、国際世論を気にして、それに対して「説明せざるを得ないな」みたいな感じで抑制されていくというところがあるんですね。

ですから、結局、日本というのは、いまの状況では力に力で対抗するよりは、やはり国際世論を盛り上げて、中国に対して圧力をかけていくほうが得策かと思うんです。そのときに、「あっ、日本は平和国家だから、確かに、それは中国に対してそういうふうに言うよね」という共感を得られなければいけないんですね。でも、いまはそうなっているかというと、「何か、日本は変な国になってきたんじゃないの」と。「侵略戦争の定義を変えたがっているなあ」とか。それから靖国参拝はやめたけど、8月15日の式辞で安倍総理が、アジアに対する加害責任に触れなかったとか、不戦の誓いを述べなかったとか・・・。これは明らかに変わってきちゃったよね、と思われている。

アメリカ議会の報告書に「ストロング・ナショナリスト」なんていうふうに書かれてしまったりとかですね。憲法改正はするし、集団的自衛権の行使はやると言っているし、それから武器輸出三原則も改正して、死の商人になろうとしていると。こういうのがいっぺんに動いていますからね。こういう一連の動きを見た普通の人は、「あっ、日本は変わったね」というふうに、いま、思ってしまっているわけです。

しかも、それを中国がものすごくうまく利用して、世界中に宣伝し始めているんですね。安倍さんがこういうことを言いました、こうしました、ああしました、ということをずらっと並べたら、日本はもう、全然違う国になるんじゃないかと、みんな心配しているんですよ。

日本が、「中国ってひどい国なんです」と言っているのに対して、中国は何と言っているかというと、「日本はついに侵略国家になった」と。ついに仮面が剥がされた、もういつ攻めてくるかわからないんだ、と。中国人は本当にそう思っているんですよね。驚いたんですけれども。いつ攻めてくるかわからないんだから、本気で軍備を増強しなきゃいけないんだと思っているんです。これは自衛のための軍拡だということを、正々堂々と、大きな声で言い始めるんですね。

そうなると、もう本当に軍拡競争になっちゃうんですよ。でも、それでは負けなんです、日本にとっては。なんとかしてそこに行かないように、アメリカや他のアジア諸国と協力して、中国がやろうとしていることを何とかして抑えていくという、そっちの努力をしないと、非常にまずい方向に行ってしまうなというふうに思います。・・・・・・