[五輪・パラリンピック招致]
白戸太朗「オリンピックで日本は変われるか」

スポーツコミュニケーションズ

お金だけではない開催意義

 しかし、大切なのはお金ではない。「本物のスポーツを目の前で感じられる機会の提供」という教育的効果も重要であろう。どんなスポーツにせよ、世界の頂点を決める瞬間のエネルギー、オーラは並大抵ではない。まして、そこに人生をかけた選手、スタッフ、団体が国の代表として乗り込んでくるのだ。そのエネルギーを肌で感じることはとても大切だと思う。特に子供たちが、多くの選手が一所懸命に戦い、競う姿を見る機会は、その後の人生に多大な影響を与えるのではないか。

 また、日本という家に多くのお客さんを迎える緊張感、高揚感も大切だ。「国が」や「政治が」と非難するのは簡単だが、それだけでは何も始まらない。それぞれのレベルでできることもあるし、考えることもある。それは家の前を綺麗にすることかもしれないし、語学を学ぶことかもしれない。自国開催を機会に、国民一人一人がオリンピックとの関わり方を考えることはとても意味のあることなのではないだろうか。とかく個人主義になっている日本。特に都会では自分のことのみになってしまっている風潮の中で、社会が自分に何をしてくれるかでなく、自分が社会に対して何ができるかを考えられるなんて、オリンピックでも来なければなかなかないだろう。今の日本に最も必要で、失われつつあるもの。それを考え、感じ、行動する機会になるのではないだろうか。

 そう、僕が思うもっとも大きなメリットは「日本全体で大きな目標を共有する一体感」だと思う。社会的な立場や、年齢などの差はあれど、皆が同じ夢をみて、それを作り上げていく。もちろんできることも、求めるモノも少しずつ違うけれど、最終的に「自国でのオリンピック」という大きな夢に向かって、自分なりのアクションがあるはずだ。成熟社会がゆえに、一体感を失いつつあるこの国にもっとも必要なことではないだろうか。そんな気持ちが国内で湧き起ってくれば、被災地への支援ももっと変わってくると思えるのだが……。経済対策だけでは得ることのできない人間のつながりが再生できたなら、十分に開催意義があると思える。日本の力と気持ちを信じ、この7年の変化を楽しみにしていきたい。

<白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール>
 スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための新会社「株式会社アスロニア」の代表取締役に就任。今年1月に石田淳氏との共著で『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)を出版。
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