9月10日、アップルが新製品の発表を行った。具体的な内容は、新型スマートフォンのiPhone5sとiPhone5cの2機種だった。この発表を見て、率直な印象は「アップルは"普通の企業"になった」ということだ。
故スティ-ブ・ジョブズが君臨していたころのアップルは革新的な企業で、常に世界をあっと言わせるような新製品を発表する企業だった。同氏がいなくなった後、アップルは、従来型製品の延長商品しか出していない。
株式市場は今回の新製品発表に対して、株価急落の反応を示した。株式投資家が「今のアップルには、以前のような夢がない」と見れば、手堅く利益確定をしておくのが得策と見たのだろう。
つい昨年夏までアップルの株価は、スマートフォンの快進撃によって上昇過程を歩んできた。ところが、拡大するスマートフォン市場で、ライバルである韓国サムスンの猛追撃を受けて、様子が変化し始めた。
先進国のスマートフォン市場が徐々に飽和しはじめ、アップルが得意とする高機能・高価格製品の先行きに懸念が台頭した。株価も、昨年9月の700ドルから、一時期、500ドルを切る水準まで下落した。
これからスマートフォンの主戦場は、先進国から中国やインドなどの新興国になる可能性が高い。そこでアップルは、今回、低価格帯のiPhone5cを導入した。それを武器に、圧倒的な顧客数を誇るチャイナモバイルとの提携を考えたのだろう。