話題の本の著者に直撃! 垣根涼介
「株式会社織田信長」に入った光秀に、
サラリーマンの悲哀を見た

フライデー プロフィール
会社員時代は1日1冊本を読んだ

 たしかに主殺しではあるけれども、では、なぜそんな裏切り者がずっと後世まで話題にのぼるのだろうと思って、光秀のことを見聞きすればするほど、こいつが間違いなくいい奴だということがわかってくる。

賞金狙いで小説を書いた

 そして、どこか物悲しい。現代風に言えば、光秀は「株式会社織田信長」というブラック企業に入ってしまった。でも、そこで社長のためにものすごく働くんですよ。しかも、仕事ができるからその分ノルマが増えて責任も重くなる。重要な仕事は増えるにもかかわらず一度ミスをすると左遷間違いなし、という苦しい立場にいたわけですよ、光秀は。これは現代の中堅サラリーマンの悲哀そのものじゃないですか(笑)。

―サラリーマンといえば、垣根さん自身も大学を卒業後、サラリーマン生活を送られていますが、なぜ小説を書こうと思われたのですか。

 28歳のときに結婚してマンションを買ったんですよ。ゆとりローンというのを組んで。ところが、買った当時は好景気だったのに、5年もしたころには不景気で給料も下がり始め、返済のめどが立たなくなって破産の可能性も出てきた。でも、社員だとバイトはできない。そこで、何かおカネを稼ぐ手段はないかと考えて出てきた答えが「小説を書く」だったんです。もともと本好きでしたから、ちょっと頑張って賞金狙いで小説を書いてみようかな、と。お尻に火をつけてくれたのは、金銭問題だったんです(苦笑)。

成功の確率を上げるための努力を惜しむな

―それにしても、初めて書いた小説が、サントリーミステリー大賞と読者賞の2つの賞を獲得するなんて、すごいことです。デビュー作を書くうえで、何か特別なことをされたのですか。

 成功の確率を上げるための努力は惜しみませんでしたね。小説ってそもそも人に読まれるためのものじゃないですか。面白いものを書くためにはとにかく誰かに読んでもらわないといけない、と考えて、高校と大学の時の友人、そして弟の3人に、書き上げた小説を「読んでくれ」と送りつけたんです。3人とも「今どきこんな女いるわけねえ」だの、「この台詞は自分に酔ってる」だのと言いたい放題でしたが、それを参考に半分以上書き直して、もう一度3人に送りました。そうすると、今度は全員が「コレはわりといい!」と言ってくれたんですよ。当然ですよね、3人分の忠告が入っているんですから(笑)。そういう努力が結実した、ということです。どんな仕事にもいえることですが、「成功の確率を上げるため」の道筋を考えて、それを実行する。これが一番大事なんですよ。

―作品の中でも「確率」や「運」が重要な要素になっていますが、本作に込められたメッセージはなんでしょうか。

 驚かれるかもしれませんが、とくに作中にメッセージは込めないんですよ。というのも、小説というのは僕が片方の割り符を示すだけで、もう片方の割り符は読者が持って来て当てはめて、そこで初めて完成するものだと思っています。だから、この小説を読んで「光秀ってこんなに情けない奴なんだ、アハハハ」と思ってもらっても構わない。ただ、もしこの作品に何か結論を見出すとすれば「世の中が変わっていくのに自分が変わらなかったら、置いていかれるよ」ってことですね。

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