千葉ロッテ・内野手井口資仁
「けっして熱くならない」それがオレのやり方

週刊現代 プロフィール

 足の速さは盗塁において必要条件であっても十分条件ではない。ピッチャーのクセはもちろん、バッテリーの配球の傾向もきちんと頭に入れておかなければならない。こうした作業を経て観察力が養われ、注意力が磨かれるのだ。

 井口は語る。

「盗塁王を目指すようになって、打席に入っているバッターへの相手バッテリーの配球を読むようになりました。確率の高いところで走らないと成功しませんからね。これがバッティングにも生きたんです」

 最初のうち、島田は一塁コーチャーズボックスから盗塁のサインを出していた。右目でウインクするのだ。これがピタリピタリと的中した。昔とった杵柄だった。

 島田の解説。

「盗塁を成功させるには、変化球で走らせることです。ピッチャーのクセや間合いも伝えなければなりません。走るとセーフになるので、盗塁が面白くなってきたのでしょう。そのうち井口自らがピッチャーのクセを探し始めました。

 コーチの仕事は、あくまで選手に興味を持たせること。押し付けてやらせるものではありません」

 '01年、井口は44盗塁でタイトルを獲った。注目すべきは打撃3部門の数字だ。打率2割6分1厘、30本塁打、97打点。いずれもキャリアハイを記録した。まさに盗塁の波及効果。井口は不動の3番に定着した。

「具体的な目標」と、「漠然とした目標」には大きな違いがある—。

 自著で井口は、そう述べている。どういう意味か。

「その頃のパ・リーグの盗塁王は西武にいた松井稼頭央さんとロッテにいた小坂誠さんの争いで30~45個の間で勝負は決まっていました。だったら、まずは30にトライしてみようと。週にひとつ走れば5週間で、月5個になります。年間で30個ちょっと。これならタイトル争いができます。

 目標を明確にするため、ひとつ盗塁を決めるたびに家のリビングのカレンダーに赤いシールを貼りました。これは励みになったと同時に達成感も得ることができた。ついでにホームランの時は別の色のシールにしようとか……。漠然とした大きな目標を立てるより、具体的な小さな目標の方が重要なんだと、この時に初めて気付きましたね」

「左遷」を受け入れる

 キャリアハイの要因としては、もうひとつショートからセカンドへのコンバートもあげられよう。これを決めたのが現オリックス監督の森脇浩司である。