現地時間で9月7日、ブエノスアイレスのIOC(国際オリンピック委員会)総会で2020年五輪の東京での開催が決まった。
招致レースの終盤になって、福島第一原発での汚染水漏れの問題の悪影響が懸念されたが、ライバル二都市を抑えて東京が開催を勝ち取った。
筆者は、小学校入学の前年(1964年)に開催された前回の東京オリンピックをテレビで見た記憶が幾つかある。
特に、男子柔道の無差別級でオランダのへーシンク選手が日本人を破って金メダルを取ったことが印象的だった。「伝統」や「地元の応援」などといったものではなく、「個人の力」こそがものをいうスポーツの現実に感動した。マラソンのアベベ選手、競泳のショランダー選手、男子100メートルのヘイズ選手などの名前も懐かしく思い浮かぶ。
下って1972年、筆者は中学1年生になっていたが、住んでいた札幌に冬季オリンピックがやって来た。中学校の近くに選手村があり、選手を生で見に、下校の途中で寄ったことを懐かしく思い出す。
この時のアイドルは、金メダルは取れなかったが、女子フィギュア・スケートのジャネット・リン選手だ。
子供にとって、身近で行われるオリンピックの強い印象は、後々まで財産になる記憶を残してくれるものだと思う。日本中の子供達のために、いいオリンピックにしてあげたいものだ。
一都民としては、費用のことや、開催時の生活の不便などを想像すると、「わざわざ東京でなくても」と思わぬでもないが、今回は、素直に喜ぶことにする。
実質的で且つ最大のメリットは、これで汚染水の問題も含めた福島第一原発の問題にごまかしが利かなくなることだ。
冷静に考えてみよう。今回、五輪招致に失敗しても、汚染水問題をはじめとする福島第一原発の問題解決がより進展する訳ではないし、まして五輪のために蓄えられたお金が流用できる訳でもない。
仮に、原発事故問題の悪化で五輪開催ができなくなれば、経済的にももちろん、国としての威信にも、甚大な損失となる。東京五輪を無事に開催するために、原発問題の国際的にも納得の行く水準での解決が必要になる。
特に、いいのは、福島第一原発の問題が世界の国とメディアの注目を浴び続けることだ。日本の多くのメディアは、政府とスポンサー企業寄りの報道に偏りがちなので、外国のメディアのチェックが入ると安心度が増す。