インタビュー/飯塚真紀子
大好評シリーズ第2弾は、世界最高峰の知性が進化生物学的な知見からセックスについて語り尽くす。「セックスを楽しむ唯一の生き物」である人間。その奇妙で驚くべき秘密は一体どこにあるのか—。
—先生は、生物学者として、生物のセックスの進化についても専門とされています。そこで今回は、ヒトのセックスについてお話を伺いたく思います。
日本では最近、高齢者もセックスに積極的になっています。生物学的な知見からこれをどう思いますか?
ダイアモンド もっとセックスしたらいいのか、しない方がいいのかというのは、日本の高齢者が自分で決めることです(笑)。
アメリカについて言えば、半世紀ほど前は、人は高齢になるにつれてセックスに興味がなくなり、性的能力も性的魅力もなくなると考えられていました。しかし、最近では高齢者もセックスを欲しており、その能力もあることが理解されるようになった。もちろん、若い時ほど頻繁でも、激しいものでもないでしょうし、何らかの助けも必要になるかもしれません。でも、多くのアメリカ人高齢者はセックスに興味を持っています。
面白いのは、高齢者が伴侶を亡くした際、よく聞く再婚の理由が「セックスのため」というものです。50年前には、こんなことは恥ずかしくて口に出せなかった。「高齢者はセックスをしないものだ」「80歳でセックスなんて気持ち悪い」と考えられていたんです。でもいまはそうではありません。
—「高齢者のセックス」について、意識面以外でも変化した面はありますか?
ダイアモンド あります。例えば女性の高齢者が、セックスアピールをするようになりました。髪を染めたり、念入りに化粧をしたり、肌を整えたりということです。
ただ私のように、女性は自然な姿の方が素晴らしいと思う男性もいます。私は現在75歳で、妻は64歳です。妻はいまは白髪ですが、私にとっては、私たちが出会った30歳の時よりも白髪姿の現在のほうが、妻を美しいと思うのです。
—それは素敵なお話ですね。一方で、若さを保つためにセックスをしているという高齢者もいます。
ダイアモンド 私は若さを保つためにセックスしろとは言いません。セックスは年齢と関係なく、したい時にすればいい。お互いを美しいと感じられさえすれば、たとえ白髪と皺だらけであったとしても、80歳の夫婦がセックスしてもよいではありませんか。