話題の本の著者に直撃! 松井忠三
左遷の経験は決して悪くない。
真の人間模様が見えるからです

フライデー
今夏、欧州を旅した際の食事の写真を見ながら

―しかし、その若さで左遷となると、やはりショックだと思います。どう乗り越えたのでしょうか。

 一抹の淋しさはありましたが、西友時代も常に傍流でしたから、いずれ出されることは覚悟していました。僕は体育学部卒で、教師志望だったのですが、デモで捕まって3週間留置場にいたことがある。だから、教員試験は全部ハネられました。

 そんな経験もありましたし、僕は生来、権力に対して唯々諾々と従う性分ではないので、上司も使いにくかったのではないでしょうか。だからといって、そこでスネて仕事に全力を尽くさなくなれば、サラリーマン人生は終わります。僕の場合、比較的、楽観的な性格だったことも幸いしましたが、大学時代にバレーボールをしていたことが糧となりました。ひとつのチームが試合を勝ち抜いていくためには、チーム内での個性のぶつかり合いを経験しながらも、実戦では各々が団結して、実力を出し切らないといけない。会社はチームの集合体でもあります。悔しくても、目の前の仕事に打ち込めたのは、このときの経験が大きかった。

 バレーボールで得た体験は、会社再建に役立った「MUJIGRAM」にも結実しています。経営から商品開発、売り場のディスプレイや接客まで、すべての仕事のノウハウが詰まっている。このマニュアルは常に更新されます。そのことで仕事が停滞することもまた、なくなるのです。

―問題点の発掘や、どこに組織再生のカギがあるのかを見つけ出すことが非常にうまく、迅速ですね。

 本質を見るか見ないかの違いだと思っています。僕に一歩先が見えているとき、社員は半歩先までしか見えていない。店舗をまわって問題点を抽出して、社員に気づきを与える。もし、自分でできなければ、一歩先どころかその先まで見えているメンターの方々にお願いすればいい。社外取締役の方々の忌憚ない意見は、危機を脱し、業績を改善する効果を生み出しました。

 僕が社長として会社を見たとき、結局、西友から受け継いだ企業風土の悪い部分を変えるのが一番重要な仕事だと感じた。そのためには徹底的に中に入り、社員の意識を改革し、企業風土を変革しなくてはダメだと思った。つまずかずに改善できたのは、他社から刺激を受けると同時に知恵も得ることができたからだと思っています。