[障害者スポーツ]
伊藤数子「ブロードバンドでノーマライゼーション社会の実現へ」

スポーツコミュニケーションズ

スポーツだからこその可能性

 ブロードバンドがつながると、インターネットで世界のさまざまな情報を得ることができるようになります。そのひとつが動画です。ブロードバンドによって動画が見られるようになると、これまで見たことも聞いたこともなかったスポーツをたくさん知ることができます。文字や写真より、動きを伝えることができる動画はスポーツの理解にとても有効です。その中にはパラリンピックに代表されるように、障害があってもできるスポーツがあり、競技によっては世界を目指すことだってできる、そんなことを知るきっかけにもなります。

 今回の会議には、情報通信系の行政や企業の人たちが出席しており、スポーツ関係はひとりもいませんでした。しかし、こうしたスポーツの利点を私が述べると、ほとんどの人が「なるほど、確かにそうですね」とすぐに理解し、納得してくれました。また、「心を動かされた」と共感もしてくれたのです。私は改めてスポーツが世界共通の文化であるということを強く感じました。スポーツはあっという間に国境も言葉も生活習慣も性別も、そして障害の有無をも超えてしまうのです。

 ところが、これまで世の中のほとんどのものは、健康で活動的な成人男子、つまり「Mr.avarage」を基準にして物事がつくられてきました。成人男子の次に、子どもや女子、高齢者、最後に障害者と、段階的に整備されてきたのです。そのために、“バリアをフリーにする”必要が出てきていました。しかし、最初から性別や障害の有無に関係なく、誰に対しても便利なものがつくられれば、バリアはないわけですから、“バリアフリー”という発想自体がなくなるわけです。

 南アジアの情報通信環境は今、大きな発展を遂げようとしています。今後、地方や山間部にも次々とブロードバンドがつながっていきます。その時、まずは健常者向けのコンテンツが紹介され、ひと段落してから障害者向けに、というプロセスを経るのではなく、インターネットがつながった瞬間から、障害の有無に関係なく幅広い情報が得られる環境を構築してほしいのです。

 新しい一歩を踏み出す時、その時こそがノーマライゼーション社会へ進むチャンスです。そして、世界共通の文化であるスポーツはその一助となり得ます。そのことが広く認知されるよう、今後も活動していきます。

伊藤数子(いとう・かずこ)
新潟県出身。障害者スポーツをスポーツとして捉えるサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。1991年に車いす陸上を観戦したことが きっかけとなり、障害者スポーツに携わるようになる。現在は国や地域、年齢、性別、障害、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するため の「ユニバーサルコミュニケーション活動」を行なっている。その一環として障害者スポーツ事業を展開。コミュニティサイト「アスリート・ビレッジ」やインターネットライブ中継「モバチュウ」を運営している。2010年3月より障害者スポーツサイト「挑戦者たち」を開設。障害者スポーツのスポーツとしての魅力を伝えることを目指している。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。