12.3%(2012年推定値)---世界第3位のGDP成長率を誇るモンゴル。ロシア、中国という大国に翻弄され続けてきたこの国が今、驚異的なペースで経済成長を続けている。その起爆剤となっているのが、莫大な埋蔵量を誇るエネルギー資源。とくに、埋蔵量約60億トンを誇るタバントルゴイ炭鉱に代表される石炭が、モンゴル経済の急成長を牽引している。
この石炭を武器に世界経済の第一線に乗り込んだ実業家がいる。MCS(モンゴル・コンサルティング・サービス)グループ会長のジャンバルジャムツ・オドジャルガル(48歳)だ。
オドジャルガルが石炭ビジネスに乗り出したのは、'05年。モンゴルにはゴビ砂漠にあるタバントルゴイ炭鉱など、すでに豊富な埋蔵量の炭鉱が確認されていたが、国内外の投資家は「採掘しても近隣に買ってくれる国がない」と開発に消極的だった。しかも、隣国の中国は自国内に多数の炭鉱を抱える石炭輸出国。いくら地理的に近くても商売にならないと誰もが思っていた。しかし、オドジャルガルが見据える先は違っていた。
「中国は近いうちに必ず石炭輸入国になると考えていました」
当時はちょうど、'08年の北京オリンピック、'10年の上海万博を控えていた。オドジャルガルは、いずれ中国の石炭消費量が急増すると信じて賭けに出た。自社開発のタバントルゴイ炭鉱で採掘した石炭の輸出先を中国だけに絞り、安定的に供給する事をセールスポイントとして強気の交渉に臨んだのだ。
「中国の企業は少しでも利益を上げるため石炭を安く買おうとします。交渉は簡単ではありませんでした」
その強気が功を奏して、石炭価格をこれまでの倍の額に押し上げることに成功。そして1年後、香港市場での上場に漕ぎつけ、世界の投資家にタバントルゴイ炭鉱の名を知らしめた。そして、MCSグループ傘下の石炭ビジネス会社は、世界最先端の技術と大規模なプロジェクトが評価され、6億5,000万ドルもの投資資金が集中。オドジャルガルは、わずか1年でモンゴルの石炭ビジネスを世界水準にまで引き上げてみせた。
昨年のモンゴル全体の石炭輸出量は2050万トン。この莫大な量の石炭がGDP成長率12.3%という数字を支えているのだ。