山口県周南市の限界集落で起きた5人殺人事件には、いまだに多くの謎が残されている。事件が起きてから1ヵ月が過ぎたいま、あらためて真相を探ってみると、驚くべき事実が浮かび上がってきた。
「保見の家の中を見たことはないだろ。居酒屋風になっとるんだ。サロンみたいになっていて、いつでもお客が来られるようにしていたんだよ。言ってみれば彼は〝泣いた赤鬼〟なんだ。保見という心の弱い赤鬼が、人に認めてもらえない寂しさを爆発させ殺人を犯してしまったんだよ」(保見光成容疑者をよく知る知人)
7月21~22日にかけて山口県周南市で起きた5人連続殺人事件から1ヵ月が過ぎた。5人全員を木の棒で撲殺、うち山本ミヤ子さん、貞森誠さん・喜代子さん夫妻に至っては殺害後、住宅に放火までされるという凄惨な事件だった。
過疎が進む地方の集落で起きたこの事件は、多くの人々に横溝正史の小説『八つ墓村』を思い起こさせた。保見光成という得体の知れない男が起こした凶行の裏には、いまだ多くの謎が残されている。事件から1ヵ月が経ったいま、〝八つ墓村〟はどうなっているのか—。
●事件が起きた集落はいまどうなっている?
事件が起こった周南市金峰地区郷集落は、全部で8世帯のみ。集落は道路を挟んで2つに分かれており、片方の地区には保見と山本ミヤ子さん、貞森さん夫妻が住んでいた3軒がある。ここは隣の集落・菅蔵につながる道路が通っているため、保見が逮捕された翌日から規制が解かれている。しかし、保見の自宅と、山本、貞森宅の前はいまだ立ち入り禁止のままなのだ。
道の反対側には残りの5家族が暮らしているが、事件から1ヵ月経った今でも規制は解かれていない。地区の真ん中を走る道路の端から端まで規制線で遮られていて、地域住民と警察関係者、親戚、知人しか中に入ることができない。
周南署の副署長によると、9月いっぱいは規制を続けるという。
●事件をくぐり抜けた集落の住民はどうしている?
今回の事件では、郷集落の8世帯12人のうち5人が殺害された。そんな状況の中、集落の生き残りとなった人々は何を思い、どう暮らしているのか。集落の近隣に住む男性が言う。