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この国は壊れはじめている「千年猛暑」異常気象はまだまだ続く

「日本は温かく住みやすい温帯の国」。小学校の社会科で習った記憶のある方も多いだろう。だがこの夏の暑さはどう考えても住みやすい国の気候とは思えない。命を脅かす"異常"がこの国を覆っている。

歴史を塗り変える暑さ

「最近、私は『千年猛暑』という言葉をよく使っているのですが、1000年前よりいまのほうが間違いなく暑い。有史以来というか、私たちは日本に人間が棲みついてから、一番暑い時期に生きているんじゃないかと思っています」

 天気予報でおなじみの気象予報士・森田正光氏は、こう語る。

 千年猛暑—。まさに今夏はその言葉にふさわしく、日本全国、とにかく暑い。

 8月12日には高知県四万十市の江川崎観測点で、気象庁の観測史上、日本全国で最高記録となる41度を記録。同市では4日も連続で最高気温が40度を超える超異常事態が続いた。

 他にも山梨県甲府市で40・7度(全国歴代5位)、甲州市で40・5度(同8位)、千葉県茂原市で39・9度(同19位)など、記録的な高温が各地で観測された(順位は8月14日現在)。

 四万十市に最高気温の歴代1位の座を奪われた埼玉県熊谷市でも、1週間以上連続の猛暑日となる、とんでもない状況だ。

 総務省消防庁のまとめでは、この夏(5月末~8月11日)に熱中症で救急搬送された人の数はなんと3万9944人で、去年の同時期より30%も増加。しかも、そのうち約4分の1にあたる9815人が、8月5日~11日のたった1週間で次々と病院に運ばれたのだという。

 森田氏はさらに、本当の"異常気温"は、実は高知ではなく東京であらわれていたと指摘する。

「みなさん、最高気温のことばかりおっしゃいますが、我々、気象予報士が見ても驚くほど異常だったのは、東京の最低気温なんです。

 なんと東京では10日から12日にかけて、42時間半も気温が30度を下回ることがなかった。30度以上の猛烈な暑さが、まる二日近く続いたのです」

 それはどれほど珍しいことなのか。実は11日の東京の最低気温30・4度は、気象庁の観測史上、日本で2番目の高さだった。しかも、これほど長時間30度以上の気温が続いたのは観測史上初のことだ。

「私はあの2日間、朝から晩まで気温をウォッチしていましたよ。気温が30度を下回らないまま12日に日付が変わったときには、軽い興奮状態に陥りました。歴史が塗り替えられた瞬間に立ち会ったという気持ちになった。それまで『今後はそういう暑さもあるかもしれない』などと言ってはいたけれど、本当に起こるとは思っていなかったことが、現実になってしまったんですから」(森田氏)

 すでにおなじみの言葉となったが、夜間の気温が25度を下回らない場合、「熱帯夜」と呼ばれる。

 一方、夜間でも気温が28度以上になると、寝ている間に熱中症になり、死に至る人も出始めるとされている。この気温28度以上の夜を森田氏は「地獄夜」と呼ぶが、東京ではすでに地獄夜は当たり前、それを通り越して30度以上の「スーパー地獄夜」に襲われるようになっているのだ。

「最低気温で見れば、東京が日本で一番暑いという日が増えています。みんながエアコンを使って熱を室外に出すし、コンクリートのビルやアスファルトの道路は蓄熱器みたいなもので、昼間吸収した熱を赤外線として日没後も放出している。人間が出す排熱で暑くなる一方です」(森田氏)

 もはや東京の真夏の夜は、窓を開けて、うちわをパタパタやっていればしのげるようなものではない。うっかり水分補給を怠ったり、冷房をつけ忘れたりしただけで命を落とす「地獄夜都市」に変貌してしまった。