[裏方NAVI]
中村一知(巨人・グラウンドキーパー)<後編>「内海、ファーム時代の努力」

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失敗からの学び

 その一方で、過去には見た目を重視するあまり、失敗したこともあるという。マウンドや内野部分の土は、十分な水分を含み、黒々とした色をした状態がベストである。乾燥して白っぽくなっていたり、水分を含んでいたりいなかったりと、まだら模様にならないよう、散水は非常に重要だ。だが、水分を含み過ぎた軟らかい土は、踏ん張りがきかず、選手たちにとってはプレーしづらい。そのバランスが非常に重要であり、グラウンドキーパーにとっては腕の見せどころである。とはいえ、季節や気象条件によっても土の状態は異なるため、具体的な数字で、まく水の量を決めることはできない。
「今の時期のように暑い日には、散水してもすぐにカラカラに乾いてしまうんです。だから、いつもよりも多めに水をまくようにしています。でも、まきすぎてもいけないので、気象条件を考慮しながら練習や試合が始まる時間を逆算して、水の量をまかなければいけません」
 すべてはグラウンドキーパーの経験による判断に委ねられるのだ。

 以前、中村はよくコーチや選手から「水をまきすぎなんじゃないの?」と言われていた。しっかりと水を含み、見た目にもきれいな状態で練習してもらいたいという思いから、ついつい多くまき過ぎてしまうことがよくあった。余計な水分を含んだ土は滑りやすく、ケガにつながりかねない。そのため、選手にとっては乾いた土以上に嫌なものなのだ。

「昔は水をまきすぎて、よく怒られていました。キーパーとしての知識や技術が未熟だったということもありますけど、考え方として、ちょっと間違っていたかなと。『お客さん相手のサービス業なんだから、見た目もきちんとしなければ』という気持ちが強過ぎたんだと思います。でも、やっぱり一番大事にしなければいけないのは、選手たちが安心・安全にプレーできることなんですよね。それを頭に入れてやるようになってからは、言われなくなりましたね」

 とはいえ、今でも散水はやはり難しいという。中村にとっては、最も気の遣う作業だ。
「どのくらいの量をまくかということもそうですし、どれだけまんべんなくまくかということも重要です。それが試合の日となると、練習後に10分くらいしかなかったりする。その短い時間でグラウンドの状態を見極めながら、さらにまだらにならないようにしなければならない。意外に気を付けなければならないのは、手前の部分なんですよ。遠くまで水をまこうという気持ちばかりが先行すると、手前がおろそかになることが少なくないんです。だから、まずは手前をしっかりとやってから、遠くの方をやるようにしています」

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