【第2回】はこちらをご覧ください。
白河: 今回、安倍政権が女性政策にあれだけ言及したので、「なんだ、女性手帳って」とか「なんだ、3年抱っこし放題って」とか批判も非常に多いんですけれども、駒崎さんは結構冷静に評価しているじゃないですか。
私もすごくいいと思ったんです。首相があんなことを言ったのって初めてなんですよ。しかも、結婚する前の人たちへの支援、女性活用、子育て世代への支援、その3つの柱が全部連動しなきゃいけないということを正式に言ってくれたのは初めてじゃないかと。
駒崎: 女性活用が成長戦略だ、というふうに位置づけたのは画期的ですよね。
白河: 今まで誰も言ってくれなかったことですから。
駒崎: 今までは、あったとしても政策的には福祉だったし、あくまで男女共同参画の文脈だったので、要は"傍流オブ傍流"だったんですよ。それが今回、成長戦略というメインストリームに乗っていったっていうのは、それだけでも安倍首相を褒めたいと思います。
たしかに「育休3年」はイケてないかもしれない(笑)。「女性手帳」も、そんな手帳はいらないかもしれない(笑)。だけれども、枝葉がちょっとイケていなかったら、「もっと、こうすればいいんじゃないの?」っていうふうに提案すればいいだけで、あんまりディスってもしょうがないと思うんですよ。
女性手帳にはジェンダーバイアスがかかっている、みたいな話はあってもいいけれども、じゃあ本当に妊娠とか出産適齢期のことを教えないでいいんですか? と。それはやっぱりあった方がいいでしょう、という話です。
白河: 女子大生に必ず聞くんです。「いくつまで妊娠できると思う?」って。そうすると、「50歳」とか、真顔で言う子が必ず1クラスに何人かはいます。「40代までは普通に妊娠する」ってみんな思っているんですよ。ましてや男の人なんて、もっと何も知らないじゃないですか。
駒崎: そうですね。
白河: そういう意味では、別に的外れなことを言っているわけではないんですけれども、ただ、打ち出し方が悪いんです。ああいうのって、誰がどういうふうに考えて、ああいう打ち出し方になっているんでしょうね。
駒崎: これは、さっきの市民運動の話にもつながるんですけれども、僕の場合は、佐藤博樹先生と山田正人さんのような個人的に仲のいい人たちがあの「少子化危機突破タスクフォース」の中に入っていた。だから、ディスる前に本人たちに聞いてみよう、まずは一次情報に当たろうと思った。
で、佐藤さんと山田さんいわく「誤報である。誰もあの場では決めていない」と。ある委員がそれを出してきて、「いろんな方法があるだろうね」っていうことは議論したけれど、その内容自体は決まったことでもなんでもない、と仰る。なるほどなと思ったんです。まだ決まってもいないことをメディアに切り取られて、いきなり「女性手帳」なんていうから「なんだそれ?」となったんですね。
だから、僕が『子ども・子育て会議』をツイッターで実況中継したのは、そういうことなんです。もし「少子化危機突破タスクフォース」に実況中継があって、みんながそれを見ていたとしたら、「それはまだ決まってないよね」っていうのは一目瞭然だったはずなんです。けれども、僕らが知ることができるのは、出された資料とあとはメディアの報道だけなんですよ。だから、よく分からなかったんです。
白河: 私も委員の方を5人くらい知っていて、あとは関わっている官僚の方も知っているので、いろいろと情報はもらってみました。「女性手帳」に関してはまず、このネーミングがイケてなかったですね。
駒崎: うん、イケてない。
白河: 「女性手帳」に関して言えば、タスクフォースの席についた時点でもうあったということです。だから、やっぱり、事前に誰かが考えていたんだなっていうのが分かってきた。あと、「育休3年」の話はこの席では全然出ていないですよね。
駒崎: あれは経産官僚が吹き込んだところもあって・・・。でも、僕が安心したのは、あれは法改正が伴わないから、今まで通り時短と育休を合わせて3年ぐらいにできるといいねという話が、いつの間にか「育休3年」になっているだけなんですよ。
白河: やっぱり言葉って重要ですね。
駒崎: 本当に重要です。
白河: 「抱っこし放題」とかも、批判しそうな人たちに突っつきどころを与えちゃっていて、もったいない気がします。