メディアやジャーナリストに政治的な立ち位置はあるのだろうか。先日、関西の人気テレビ番組に出演したとき、こんな話題で盛り上がった。私と同じく活字メディア出身のジャーナリストはこう言った。
「私の先輩たちの時代は『ジャーナリストは左でなくちゃいけないんだ』と言ったもんですよ。政権を批判するのがジャーナリストなんだから、という理屈ですね」。彼の頭には、1980年代前後に活躍したニュースキャスターや著名記者たちが念頭にあったようだ。
ひと昔前のジャーナリストには、就職前に学生運動を経験した人たちも多かった。学生時代から政府を批判するのが正義と信じ、新聞社やテレビ局に就職して記者になってからも、政府批判をするのが社会に対する職業的使命、と心得ている人々である。後に述べる理由で、私にはこの感覚がよく分かる。
放送出身の別のジャーナリストは「テレビに登場するジャーナリストは真ん中より少し左というのが、普通の立ち位置じゃないか」と語った。これも基本的には「政府批判こそがジャーナリストやメディアの役割」という理解から出てくる話だろう。
「ジャーナリストは真ん中より少し左」という話は本当だろうか。あるいは「少し左のジャーナリスト」は本当に世の中の役に立っているのだろうか。私には、そういう問題の立て方自体が「ちょっと違うんじゃないか」という感じをぬぐえない。今回はその辺の問題に触れてみたい。