第45回 石橋正二郎(その二) 陸軍も海軍もタイヤを欲した―石橋と鳩山を結んだ大戦の「緊迫」とは

福田 和也

「私から、ストをやれとは云わないが、肩すかしをするにはいい時だから、やるならやってみろ、一人でも戦う」

石橋は云い放った。

「ストをやれば賃金を払えない。品物が出来ない。そうするとお得意様を失ってしまう。それも仕方ない」

とうとう、従業員がストライキに参加した。
半月ぐらいすると、組合員たちは靴磨きや行商をして、いかにも哀れを繕って、資本家の非を訴え、社長を葬れ、というようなビラを撒いた。

石橋は、「賃金は倍にすると云っているのだ、人事権は、絶対に譲れない」と云いはり続けた。

結局、組合は折れて、二倍の賃金を受け容れた。

『週刊現代』2013年8月31日号より