重力理論と量子力学を統合した先の衝撃!『大栗先生の超弦理論入門』

九次元世界にあった究極の理論
大栗 博司 プロフィール

 そして、この理論が数学的につじつまが合っているかどうか確認していく作業の過程で、空間の次元が変化するという驚くべき現象が明らかになりました。つまり私たちは、自然界の基本的な姿を科学の方法で探っていくうちに、やむにやまれず「空間とは何か」を考え直すことになったのです。そのことをみなさんにも理解していただくのが、本書の目的です。

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 ここで、本書の読み方についてご提案します。

 私はこの本を、できるだけ少ない予備知識で超弦理論の最先端までご案内できるように書きました。そのための準備として、第1章と第2章では、量子力学や素粒子論についての基礎的な知識について解説をしています。

 しかし、もっと手っとり早く超弦理論の話だけを知りたいと思われたり、あるいは、これらの章を読んでいてつまずきそうになったりした方は、超弦理論の話が本格的に始まる第3章から読みはじめてもさしつかえありません。いったん全体の様子がわかってから、もっと深く知りたいと思ったところを前の章で確認すればよいと思います。

 第3章では、物質の基礎となる素粒子やその間に働く力を、超弦理論ではどのように考えるのかを説明します。また、もともとは「弦理論」という名前の理論だったのがなぜ「超弦理論」になったのか。二つの理論の違いと、そのように理論が発展する過程も丁寧に解説しています。

 第4章では、超弦理論では「空間の次元が決まる」理由を明らかにします。超弦理論の大きな特徴は、空間とは何次元なのかが決まるところにあります。そこで本書では、なぜ次元が決まるのかの本格的な説明にチャレンジしてみました。ただし、最初は難しく考えずに「超弦理論では次元が決まるんだな」くらいの軽い気持ちで読んでも、その先を理解するのには困らないように書いてあります。

 第5章では超弦理論からいったん離れて、重力や電磁気力など、自然界のすべての力に共通する原理についてお話しします。これは「ゲージ原理」といわれるものです。素粒子についての現在の基本的な理論(標準模型)も、そのあとに登場した超弦理論も、その基本にはこの原理があるので、本書では、できるだけやさしく、しかしごまかしのない解説を試みました。ただ、やや抽象的な概念なので、話の筋を見失いそうになったら「ゲージ対称性」という言葉だけを憶えておいて、次の章に進んでも結構です。その先でこの言葉が出てきたら「第5章で説明していた話だな」くらいに気軽に考えていただき、さらに深く知りたくなったときだけ、この章に戻ってきてください。

 そのあとの第6章から、いよいよ超弦理論が主役となります。

 第6章の、超弦理論が素粒子の理論の花形に躍り出るまでの「第一次超弦理論革命」、そして第8章の、超弦理論の完成度が飛躍的に高まった「第二次超弦理論革命」。この二つの「事件」によって、超弦理論が劇的に進歩した過程を紹介していきます。また、その間の第7章では、私自身が超弦理論に魅せられ、研究にのめりこんでいった経緯についてもお話しします。