スクープレポート 高齢出産「本当のリスク」出生前の遺伝子検査で誤診が続出していた

ダウン症児を生んだ母親が、検査した医師を訴えた!
週刊現代 プロフィール

 と答えている。また、7月の第一回口頭弁論でも「検査報告書はわかりにくかったが、誤って患者に報告したことは認める」と、自らのミスを告白している。

 遠藤医師をはじめ、クリニックの職員が誰一人としてデータの見間違いに気付かなかったのは、診療体制がずさんだったというほかないだろう。この「誤診」そのものについては、相応の額の慰謝料が認められる可能性が高い。

 問題は、第二の争点である。「亡くなった赤ちゃん本人の肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料」をどう考えるかは、意見が大きく分かれるところだろう。

 紀子さんらの主張を噛み砕くとこうだ。遠藤医師が羊水検査の正しい結果、すなわち赤ちゃんがダウン症であることを紀子さんらに正確に伝えていれば、赤ちゃんは堕胎され、生まれなかった可能性が高い。そうすれば、赤ちゃんは病に苦しみ、死ぬこともなかった—。

 しかし、この主張に対し、

「『この子は生まれて来ない方が本人にとってもマシだった』という判断を、第三者が下すのは無理があるのではないか」

 と疑問を呈するのは、大阪・オークなんばレディースクリニック院長の田口早桐医師である。

「今回の場合は重い合併症のためにお子さんが亡くなったわけですが、一方でダウン症でも生きている人はたくさんいます。もしこの言い分が通用するとしたら、ダウン症に限らず、生まれた後で苦しんでいる人はみんな堕胎されればよかった、生まれて来ないほうがマシだったという理屈になる」(同前)

 被告である遠藤医師の側も、この訴えに関しては真っ向から反論している。

「原告らは、被告遠藤の過失がなければ胎児は中絶されて出生しなかったとする考えを前提としている。しかし、これは『妊娠中絶』つまり、求められないダウン症児の『命の選別』を当然のこととしており、生命倫理に反することは明らかである」(被告側答弁書より)

 ただ、現実問題として、紀子さん夫妻が「異常があれば堕胎する」ことを想定していたのを単純に批判することはできない。高齢出産でダウン症児が生まれた場合、将来にわたって親が面倒をみられるとは限らない。場合によっては、他の兄弟などの人生にも大きな影響を与えかねないのだ。当の遠藤医師も、このような事情を理解していたからこそ、紀子さんに羊水検査を勧めたという経緯がある。

本当のことは言えない

 そもそも、問題の根底には、日本の法律が抱える「矛盾」が潜んでいる。意外に知られていないが、日本では建て前上、胎児の障害を理由に堕胎を行うことは犯罪(堕胎罪)である。強姦などによる妊娠と、子どもを育てることがよほど経済的・身体的に難しい場合だけ、医師によって堕胎できると定められている。