スクープレポート 高齢出産「本当のリスク」出生前の遺伝子検査で誤診が続出していた

ダウン症児を生んだ母親が、検査した医師を訴えた!
週刊現代 プロフィール

あまりにも短い生涯

 出産の喜びもつかの間、予想だにしなかった事実を突きつけられ、紀子さんら夫妻が動揺したのも無理はない。紀子さんが出産した函館五稜郭病院による診察記録には、出産直後の葛藤が生々しく記されている。

「(紀子さんは)児(註・三男)の状態が予想外だったため受容できず、養育についても考えられない状態のようです。『年齢も考え、遠藤医師に勧められて染色体検査をした。もし異常があれば妊娠継続は諦めようと思っていた。異常ないと言われたので生んだのに』『この児の世話に手を取られることによって家が崩壊してしまうのではないか』などの言葉が聞かれました」

 赤ちゃんには、その後何週間にもわたり、集中治療室で治療が施された。当初は現実を直視できなかった紀子さんだが、懸命に生きようとする赤ちゃんの姿に愛おしさを感じるようになり、受け入れる心の準備も徐々に固まり始めていたという。しかし、予定日より3週間早く生まれたその子にとって、病はあまりに重かった。

「12月に入り、容態は悪くなる一方。凝固機能が低下し、体内での出血が始まりました。痰をとっても口から出血。尿道からも出血。体幹は内出血で紫色になっていました。今、改めて涙がこぼれます」(紀子さん)

 そして治療も空しく、肝不全・肺化膿症・敗血症などを併発した赤ちゃんは、生後わずか3ヵ月あまりの'11年12月16日に力尽き、短い生涯を終えた。

 これまで伝えた紀子さんの声は、いずれも今年5月13日に函館地裁に提訴された損害賠償請求訴訟に際するコメントに基づいている。そう、紀子さんら夫妻は今年、遠藤医師を訴えたのだ。

 この裁判は、単なる医療過誤裁判とは一線を画す。そこには、生命倫理の根幹を問うような争点が含まれているのである。

 現在、夫妻が遠藤医師に対して請求している損害賠償の内訳は、大まかに分けると次の二つの点からなる。

(1)紀子さんら家族に羊水検査結果を誤って伝えたことについての慰謝料

(2)赤ちゃんが病気で苦しみ、亡くなったことについての赤ちゃん本人に対する慰謝料

 まず、第一の争点については、紀子さんら原告側と、被告・遠藤医師に大きな意見の食い違いはない。遠藤医師は本誌の取材に対して、

「今回の件は、私がデータを見誤ったことに起因していることで、自分の過失を認めております」