『ウルトラマンが泣いているー円谷プロの失敗』 栄光と迷走の50年

週刊現代 プロフィール

 本書には円谷プロのターニングポイントがいくつか出てくる。英二の後を継いだ息子の円谷一の急逝、初期の脚本を担当していたTBSとの決別、大量の演出家の解雇、そして大株主東宝との対立。海外進出の判断ミス、著作権ビジネスへの中途半端な注力。どこで道を間違えたかの解釈は読み手の立場によって異なるかもしれないが、経営が浮き沈みが大きく安定しなかったことだけは確かである。

 ウルトラマンは本来、単にウルトラマンが怪獣を倒して、「メデタシ、メデタシ」の単純な話ではなかった。正義と悪の二項対立でなく、「元々、悪い奴はいない」という製作者のまなざしが子供と一緒に大人が見ても楽しめる評価を生んだ。経済成長などのひずみが生み出した弊害を怪獣や敵という形で描き続けたのが、初期の「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」、「怪奇大作戦」であり、現在の再評価につながっている。

 ただ、その過程では、効率性を求め続けた時代背景からか、仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズのようなわかりやすく単純な勧善懲悪物に人気を奪われていった面もある。ウルトラマンシリーズは先鋭化した作品などを試みるが、00年以降はテレビ放送を毎年確保できない状況に甘んじ、07年以降はしばらく遠ざかった。テレビが全てではないが、仮面ライダーやスーパー戦隊のテレビ放送が継続していたのとは対照的だ。

 作品のこだわりと経営上のコスト、そして時代の変化。単純化してしまえば、過去の成功体験が大きかった故に、「夢を売る企業」だけに折り合いをつけられなかったのだろう。ただ、効率性の追求の弊害を世に問うた「ウルトラマン」が効率性の波に呑み込まれていく姿は情緒的だが何とも切ない。著者の見方は一面的ではあるが、その苦悩が映し出されている。。 

ウルトラマンが泣いているー円谷プロの失敗

  • 作者:円谷 英明
  • 出版社:講談社
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内容紹介
1960年代から80年代にかけて、多くの子どもたちが夢中になったウルトラシリーズ。

ミニチュアや着ぐるみを駆使して、あたかも実写のように見せる独自の特撮技術を有し、
日本のみならず世界の映像業界をリードしてきたはずの円谷プロから、
なぜ、創業者一族は追放されたのか。

「特撮の神様」と呼ばれた円谷英二の孫にして、
「円谷プロ」6代社長でもある円谷英明氏が、
「栄光と迷走の50年」をすべて明かします。