[ボクシング]
杉浦大介「“敗者なき戦い”の後で」

~オマー・フィゲロアvs.荒川仁人~
スポーツコミュニケーションズ

再び米国で試合の可能性も

「言葉でこの試合を正確に表現することはできない。フィゲロアと荒川が繰り広げた死闘は、観ているものに畏怖の念を感じさせるほどだった。2013年は好試合が多かったが、今戦こそが年間最高試合の最有力候補だろう」

「ESPN.com」のダン・レイフィール記者が自身のコラム内でそう記述したのに続き、「MaxBoxing.com」のスティーブ・キム記者は「試合前は無名の存在だった荒川だが、そのハートの強さと勇気はしばらくは忘れられないだろう」。

「Showtime」の解説者のアル・バーンスタイン氏も試合中に「まるでアーツロ・ガッティ対ミッキー・ウォード(02~03年、3度に渡る伝説的な激闘を展開したライバル対決)のようだ」と述べるなど、業界の著名人たちがそれぞれ絶賛を続けた。

 もともとボクシングをエンターテインメントと考えるアメリカでは、単なる勝ち負けだけでなく、試合の面白さも追求される。必ずしもエリート王者と言えなかったガッティが名誉の殿堂入りを果たしたことが示す通り、リング上で飽くなき“勇敢さ”と“勝利の意志”を示す選手は高く評価される。

ゴールデンボーイ・プロモーションズのデラホーヤ氏(右)も荒川の闘志を賞讃。

 フィゲロア戦後、荒川はオスカー・デラホーヤ氏からも直接、言葉をかけられたという。筆者は諸事情で、この試合の現地取材は叶わなかったが、それでも周囲のボクシングファン、記者から盛んに感想を求められた。

 キム氏の言葉通り、世界的には完全に無名だった“童顔のスナイパー”が、フィゲロア戦の1試合で大きく知名度を上げたことは間違いないだろう。アメリカのテレビ局が再起用に興味を持つことも確実。遅かれ早かれ、荒川にはアメリカで試合をするチャンスがまた訪れるのではないか。