池上彰×津田大介 【第1回】「オールドメディアを過大評価する必要はないということを伝えたいのです」

共著『メディアの仕組み』記念対談

津田: むしろ、速報的な情報だけを押さえていても、大局的な視点で見ることができなくなる、と。

池上: そうだと思いますよ。タハリール広場の周辺でどこの派とどこの派が衝突して、なんてことをいちいちチェックしてもしょうがないだろう、と。モルシ大統領が失脚したというなら大きなニュースですが、そこまでの全体の流れをチェックするということで、そういうことが私のとりあえずのニュースの見方ですね。

津田: でも、そんな池上さんでも、たとえばアラブの春だとか今のエジプト情勢のお話で、軍が発砲し始めたみたいな状況だったり、かなり動き始めたりすると速報が重要になってきたりしますよね。大きな事件がリアルタイムで起きているときは、テレビで情報を入手するのかネットで情報を入手するのか、そこはどうですか?

池上: それは、NHKで32年間ずっと記者の仕事をしていたんですが、そうすると常にテレビやラジオのニュースをチェックするためにモニターを持っていたわけですね。常に持っていたんですが、NHKを辞めたあとに、あるとき「ああ、お昼のニュースを聞かなきゃ」とテレビモニターをつけようとしたんだけれど、「あれ、待てよ? これを聞いたからって何になるの?」と思いまして(笑)。

もうNHKを辞めちゃったわけだから、別にテレビで伝えるわけじゃなし、とりあえず執筆に専念しているときに、そんなにリアルタイムで速報したって何になるんだろう、と。それに気がついたときの開放感ですねぇ(笑)。「うわー、こんなことをいちいちチェックしなくていいんだ」と。

「東スポは読んでいますか?」

津田: 「時事のニュース」と言われると、われわれは速報から何から全部追いかけていなければならないと思うんですけど、そんなことはなくて、自分のペースで興味があるニュースを深くじっくり知っていくというようなペースでもいいってことですよね。たしかにそうですね、池上さんが解説をするときには、リアルタイムで起きていることを解説するというより、そういう場合でも今までの知識やストックを元に解説をされているわけですからね。

池上: 事実私も、テレビでも週刊誌でも解説をするときは、フローというよりはストックですね。今何が起きているかということよりも、この1週間の動きをまとめたうえで、そもそもこの話はどういうことなのかということを解説するわけですよね。そういうふうに考えれば、本当にリアルタイムでやる必要はないわけですよ。

それはたしかに、アシアナ航空機がサンフランシスコの空港で着陸に失敗した、となれば、「えっ?」となりますし、どれだけの被害が出たのかな、ということは見ますけれども、ある程度見えてくると、「ははーん、副操縦士の操縦ミスだな」ということが読めちゃうわけですね。そうすると、そのあとのいろいろな事故原因の究明というのはいちいち見なくても大体わかるな、というふうになったり、とりあえず見出しだけを見ていれば流れはわかるな、と私の場合はなるので。

津田: ちなみにさっき新聞10紙というお話があったんですが、またニコ生のコメントで「東スポ読んでいますか?」というのがあって(笑)、差し支えなければその10紙の紙名を教えていただいていいですか?

池上: 朝日、毎日、読売、日経、産経エクスプレス・・・産経本紙じゃなくて、産経の本紙と夕刊フジとフジサンケイビジネスアイ、その主な記事だけをまとめたものがあるんですね、それと、広島に本社がある中国新聞に連載を持っていますから中国新聞、それから朝日小学生新聞と毎日小学生新聞は、講読しているわけではないんですが、いつも送ってきてくれるんですね。これで8紙ですね。最近は信濃毎日新聞も毎日送ってきてくれているので9紙。それから、いつも家を出て近くのキオスクで東京新聞と産経新聞の本紙を買うので、あ、11紙ですね。