池上彰×津田大介 【第1回】「オールドメディアを過大評価する必要はないということを伝えたいのです」

共著『メディアの仕組み』記念対談

池上: そうですね、まだね。この本のなかでもオールドメディア代表として出ていますから(笑)、基本的に新聞大好き人間で、8紙をとってさらに途中で2紙を買って、全部で10紙に目を通すという具合に、本当に新聞大好き人間ですね。そこから始めていく、ということです。

津田: でも、10紙を全部隅から隅まで読んでいたら、時間がいくらあっても足りないじゃないですか。大体新聞に目を通す時間って、1日このくらいとか決めているんですか?

池上: 朝、食事をしながら新聞に簡単にワーッと目を通すのが30分くらいですね。とりあえず一面からいちばん最後のページまでめくっていくのに、一つの新聞について数分くらいで終わるでしょう?

津田: 何がおもしろいかを見るための目次のような感じで見るわけですね?

池上: 各紙の一面トップを見て、「ああ、バラバラだな」とか。今日なんかはかなりバラバラでしたよね。それを見て「ああ、ネタ枯れだな、大したニュースがないなかでみんな独自ネタを集めてるけど、特ダネでもないしおもしろくないな」となったり、あるいは大きなニュースが起こったときのそれぞれの扱いの違いとか、それをパッと見るくらいですね。あとはそれぞれのところに何があるのかというのを見ておいて、その日寝る前に今度はあらためてじっくり見るわけです。

津田: なるほど、朝はサマリーを見ておいて、夜にじっくり読む、と。

池上: とりあえず、昨日何があったのか、今日の新聞に何が書いてあるのかは見たわけですから、その日の夜は全体の流れがわかっているなかで、あらためて見ておもしろいと思ったら、そこだけ破いてとっておくんですね。

津田: ちなみに、夕刊はどうされていますか?

池上: まず、夕刊から見ますね。夕刊もなかなか辛いな、というところはありますけど、とりわけ国内の話ってほとんど入っていないですね。ただ、時差の関係で海外のニュースがいろいろ入っているので、とくにエジプト情勢が動いていたりすると、とりあえずそこで朝刊には載っていないことを見るというのはあります。

でも、テレビやネットのほうが早かったりしますよね。だから、夕刊というのはニュースそのものというよりも、文化欄でいろいろな論者が論じていることとか、あるいは金曜日になりますと週末のお奨め映画というのが各紙出ていたりとか、そういうものを見ることが多いですね。

速報的な情報を押さえても、大局観は得られない

津田: 今、ニコ生のコメントを見ていたら、「新聞をそんなふうに、朝サマリーを見て夜にじっくり読むというペースだと、速度的に追い着けないんじゃないのか」という疑問があったんですが。たとえば、時事問題なんかだと、ネットだとかなり情報が早いじゃないですか。それでは情報を採り入れる速度がちょっと遅くなるんじゃないか、という意見があったんですが、どうですか?

池上: そこは、日々常に今何が起きているかということをいちいちウォッチしていてもしょうがないと思いますね。たとえば、エジプト情勢であれば、クーデターで反モルシ派が集会を開いている、それでどこでどういうふうに衝突したか、首都カイロのタハリール広場で衝突した、なんてことをリアルタイムで常に見ていてもしょうがないな、どうせ数日経てば結果がわかるんだから、と。

それよりも、反モルシ派の中でどういう陣営が多いのかとか、それに対してモルシ派はどのような行動をとるのかとかね。とりわけ、反モルシ派はムスリム同胞団が主体になっているわけだけど、ムスリム同胞団というのはイスラム原理主義のなかでも穏健だと言われているのに、その人たちがたとえば今回で言えば「インティファーダを呼びかけた」と聞くと、日本語では「蜂起を呼びかけた」となるので「えっ?」と思うでしょう? つまり、「武器を持って立ち上がれ」という意味なのか、と。

でも、日本語で「蜂起」と書いてあっても、アラビア語の「インティファーダ」と書いてあるということは、すぐに武器を持って立ち上がれという意味ではないんだということを理解したりね。あるいは、そういう解説のところを押さえておく、と。