三田紀房『砂の栄冠』に学べ!
高校野球を"興行"の視点から分析する「甲子園研究所」
講義(5)応援で勝つ~ブラバン勝ちを狙え~

唐木慎介樫野高校吹奏楽部部長で理系の優等生。七嶋が高品質なトランペットを購入するという条件で、樫野高校のオリジナルの応援曲を野球部のために極秘に作る。

助手 あのレベルになると、文字通り野球場ではなく、"劇場"ですよね。演奏会を聞きに行っている気分になりますから。

所長 そうなんだよ。実は、甲子園はブラバンのために用意された劇場でもあるんだ。どんな大きな公演会だって、5万人の前で演奏するなんてことはないだろう。だから、ブラバンの人たちも義務感ではなく、自分たちの力を見せる場として積極的にかかわってほしい。

自分たちも演出して、試合に参加しているという気持ち。そうなれば、自然と工夫が生まれてくるはずだからね。「オレたちが試合を決める」ぐらいの気持ちで熱い演奏をしてほしい。

助手 チアの子たちも必死に踊ってますし、やっぱりそういう必死さが人をひきつけ感動を呼ぶんですよね。

七嶋和子離婚後1人で七嶋を育てている。主将の親がなるという慣例で、野球部父母会長になってしまった。七嶋がピンチの時でも気丈に振舞うが内心は、結構腹黒いことも考えている。

所長 世界広しといえども、野球場であれだけブラバンが思い切り演奏できるのは日本ぐらいのものだろう。夏といえば甲子園を連想するように、季節を彩る伝統芸能といっても過言ではない。「オレたちは日本の風物詩を演出しているんだ」という気概を持って演奏してもらいたいね。

助手 "宇宙空間"を作り出すには、ブラバンの力が不可欠ということですね。

所長 その通り。リードされている9回に観客がうちわをパタパタしているようでは勝ち目はない。選曲、演奏、気合、そして演出。「この曲がかかれば何かが起きる・・・」スタンドから自然と手拍子が起きてこそ、初めて神様がふりむき、奇跡も生まれる。甲子園は劇場なんだから。

助手 いつ"樫野オリジナル"で演出するのか。樫野応援団から生まれる"宇宙空間"に注目ですね!!

(文・田尻賢誉)

講義⑥へつづく〉

※このページはヤンマガKC『砂の栄冠』巻末企画「甲子園研究所」を再構成したものです。

田尻賢誉氏プロフィール
1975年生まれ。スポーツジャーナリストとして野球全般の取材活動をはじめ、中高生、指導者への講演活動も行っている。著書に『あきらめない限り、夢は続く』(講談社)、『公立魂~鷲宮高校野球部の挑戦~』、『高校野球 弱者の戦法』(共に日刊スポーツ出版社)など。甲子園に近づくメルマガは、00583010s@merumo.ne.jpに空メールで購読可能。(2013年7月現在)
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