三田紀房『砂の栄冠』に学べ!
高校野球を"興行"の視点から分析する「甲子園研究所」
講義(5)応援で勝つ~ブラバン勝ちを狙え~

助手 言われてみれば、沖縄なんかもそうですよね。興南が春夏連覇した2010年なんか、夏の決勝前のスタンドはすでに泡盛でできあがった人であふれてました(笑)。指笛もピーピー鳴っていて、もう「興南が勝つものだ」と決まっていた感じすらありました。

所長 そうだろう。沖縄も経費の都合で学校から応援団が来ることはまれ。だから沖縄出身で関西在住の先生が指揮を執って、地元の高校が友情応援を買って出ている。チアリーダーも地元の女子校の生徒だし。それでも、"ハイサイおじさん"など沖縄独特のノリのいい音楽で盛り上げるから、関西在住の沖縄出身者を中心にアルプ スが埋まる。

助手 それに比べると、東北地方は応援がさびしいですよね。陸続きなのに・・・。

所長 その通り。東北勢がいまだ優勝できないのはそこに原因があるといっても過言ではない。部員の声ばかりでブラスバンドの音が聞こえないんだから。あれじゃあ、"宇宙空間"は作れない。

助手 その通りですよね。

所長 わかってないよ、まったく。沖縄の例に限らず、甲子園で演奏したい、踊りたいという人たちはたくさんいるんだから。甲子園に行けばわかるけど、球場の造りはすり鉢状。まるでローマのコロッセオのようなんだ。

グラウンド内にいると、スタンドの声援が波のように押し寄せる感覚になる。ベンチもグラウンドも地響きで本当に揺れている感じになるんだ。これが重圧になり、動揺を誘う要因になる。スタンドが作り出す雰囲気が選手たちのプレーに影響を与える。甲子園は野球場としてではなく、"劇場"と考えなきゃダメってことだね。

助手 要するに、ただ野球をやっていればいいわけじゃないんですね。

所長 そうなんだよ。いかにスタンドと一体となって雰囲気を作るか。いい例が新湊(富山)だね。町の人全員が来ているんじゃないか!? というぐらい、町民が応援にかけつける。アルプスに入りきれないから、内野スタンドやバックネット裏にまで陣取り、イスの上に乗ってハタキを振りまわす。 1球のストライク、1球のボールだけでヒットが出たかのような大声援を送る。これはもう、相手にはたまらない。

助手 1986年春にベスト4に進出したときの試合が、2000年代に入っても地元のケーブルテレビで放送されていたぐらいの町ですからね。かなりぶっとんでます(笑)。

所長 2011年夏の甲子園で平安を破ったのなんかはまさにスタンドの力。地元でオールドファンの多い平安は初めて甲子園でアウェイ感を味わったんじゃないかな(笑)。甲子園には魔物も神様もいるけど、その神様に認められるためには、「野球も応援もこれだけがんばりました。地域も学校も一丸となってます」というアピールが必要なんだ。

だから、やっぱりあれぐらいの"ぶっとび感"がないとダメなんだよ。ある意味いっちゃってるような異常さがないと「これだけがんばってるから勝たせてやるか」と思ってもらえない。

助手 個性も何もなくて、ポパイやルパン三世みたいな定番ソングしか演奏しない応援じゃあ、話にならないってことですね。