二宮寿朗「松田直樹の名のもとに広がる命のつながり」

二宮 寿朗

もっと大きな“後押し”が必要

 講習会には松田の姉・真紀さんの姿もあった。真紀さんは地元・群馬で看護師を務める傍ら、医療に従事する立場からAED普及、心肺蘇生法を広げる活動にも参加している。以前、真紀さんはこう話していた。

「私が直樹の姉として何ができるんだろうって考えたとき、やっぱり直樹のように突然倒れて亡くなるという人を少しでも減らしたいと思うようになりました。直樹はまだ良かったと思うんです。周りの方に心肺蘇生をしていただき、救急車が来るまでずっとやってもらったわけですから。心臓マッサージというのは1分やっても、体力的にはきついもの。直樹がもしグラウンドで亡くなってしまっていたら、私たち家族は生きている直樹とは会えなかった。そういう意味でも本当に感謝の言葉しかないんです。会えたのは心臓マッサージのおかげだと思っています」

 日本で年間、6万人もの人が命を落としている心臓突然死。それを防ぐ心肺蘇生、AED使用のノウハウを知る人が増えたといっても、まだまだその数は少ない。
 松田の親友である安永聡太郎氏が代表理事を務める一般社団法人「松田直樹メモリアル」でもPUSHプロジェクトと連携して、イベントの際にはAED講習会を開催するようにしている。今年1月、松田の地元である群馬で「メモリアルマッチ」が行われたときも、試合前のピッチで講習会が実現した。8月2日、松本・アルウィンで予定されている「メモリアルマッチ」でも講習会のスケジュールが組み込まれているという。

 ただ、救命の輪を広げていくためには、団体、個人レベルではどうしても限界がある。もっと大きな“後押し”が必要だと感じる。松田直樹という財産を失ってしまった日本サッカー界全体で、さらなる積極的な動きがあってもいいように思う。将来的には全国レベルで地域のクラブや学校にも、さらにその輪を広げていってほしいものだ。

 安永氏いわく「直樹は人と人をつなげるのがうまかった」。
 人と人のつながり、命のつながり――。それこそが「松田直樹メモリアル」のテーマでもある。

 松田直樹の名のもとに、命の輪がさらに広がっていくことを願うばかりである。