二宮清純レポート 千葉ロッテ監督 伊東勤 小心者だから、勝負に勝てるのです

週刊現代 プロフィール

「解説者として井口のプレーを見ていた時、正直、守備力、走力での衰えは隠せなかった。それで春のキャンプが始まってすぐ、本人を呼んで告げました。"セカンド一本では難しい"と。本人は"試合に出られるのなら、どこでもやります"と言ってくれた。それは僕にとって、ものすごくありがたい返事でした」

 狙いは的中した。守備の負担から解放された井口は開幕から中軸に座り、打率3割2分2厘、17本塁打、58打点。いずれもチームトップの数字を残している。

 井口をセカンドからファーストにコンバートしたのを皮切りに、ショートの根元俊一をセカンドに回し、2年目の鈴木大地にショートのレギュラーを与えた。内野で不動なのはサードの今江敏晃だけだ。

 まさにここまでの好調は、伊東のやりくり上手の為せる業としか言いようがない。熟慮の末の"人事異動"には指揮官も手応えをつかんでいる様子。

「鈴木については"この子はちょっとおもしろいな"と前から思っていました。非常に堅実なプレーをする。オープン戦で使っても、きちんと結果を出してくれました。これは井口が疲れた時のバックアップではもったいない、と。

 昨季、ショートのレギュラーをつかんだ根元は捕るほうは問題ないのですが、スローイングに難があり、エラーが失点に結びつくケースが多かった。それで元のセカンドに戻したんです」

 適材、適所、そして適時。伊東の人材マネジメントの巧みさは玄人筋をもうならせる。

 指揮官として2度のリーグ優勝経験を持つ北海道日本ハム前監督・梨田昌孝は、こう褒める。

「この選手がダメなら、次はこの選手。それもダメなら、今度はこの選手と、伊東監督はまるで将棋でも指すかのように次の一手を考えている。常に最善手を探る手法はキャッチャーならではのものと言っていいでしょう」

運命を変えた捕手転向

 長い捕手人生が、伊東のチームづくりや采配に影響を与えていることは想像に難くない。伊東のこれまでの歩みを振り返ろう。

 川上哲治や吉原正喜(ともに元巨人)らを輩出した名門・熊本工高では当初、外野手だった。それを2年の冬、捕手にコンバートしたのが監督の林幸義である。

 その林が言う。

「当時、熊本で一番強かったのが、その後、ロッテに入る園川一美がエースだった九州学院。トップバッターには藤村寿成という俊足の選手がいました。今の巨人・藤村大介の父親です。