7月21日の晩、テレビで参院選の開票速報を見ていたら、携帯電話に、「86××・・」という中国の番号からの電話が、次々に鳴った。立て続けにかかって来た7~8件の電話は、すべて中国メディアからで、私から選挙後の安倍政権に関するコメントが欲しいというものだった。
私は、今回の参院選に関して、改めて、中国メディアが多大なる関心を抱いていることを思い知ったのだった。それと同時に、日本と中国の安倍政権を見る「温度差」についても、思い知らされた。
例えば、ある大手中国メディアの記者の電話取材は、次のような調子だった。
中国人記者: 今回の選挙において、自民党が大勝したことで、安倍首相はいままで以上の圧政を敷くのでしょうか?
私: 多くの日本人は、安倍首相の執政を、圧政とは思っていません。それは内閣支持率が60%前後をキープしていることからも明らかです。
中国人記者: でもアベノミクスは、早くも失速寸前ではないかと、中国メディアは報じています。
私: アベノミクスはまだ端緒についたばかりで、成功か失敗かという結論を出すには、まだ時期尚早でしょう。アベノミクスの「3本の矢」のうち、最初のインフレ目標にしても、指標にしているのは2年後の数値です。
少なくともこの半年間を見る限りでは、先代の民主党政権に比べたら、よくやっていると思います。経済も、徐々に回復してきているという実感があります。それは、デパートが賑わっているとか、タクシーが拾いにくくなったとか、レストランが予約しにくくなったとか、いろんなところで感じます。日経平均株価も、この半年で8000円台から1万4000円台にまで上がりました。
中国人記者: でも安倍政権は来年から消費税を上げて、日本国民を苦しめるのではないですか?
私: 消費税を上げると決めたのは、先代の野田・民主党政権です。安倍首相は、来年4月から消費税率を8%にするのかどうか、この秋に最終的に判断すると言っています。
しかし、麻生副首相兼財務相は、「上げる方向で臨む」と明言しているので、おそらく上げるのでしょう。しかしながら、消費税率のアップによって、どれくらい景気に影響が出るのかは不明です。
中国人記者: 安倍首相はこれで名実共に「皇帝様」になるのでしょうが、安倍皇帝が、中国に再度、侵略戦争を仕掛ける可能性は何パーセントくらいあると思いますか?
私: 0%です。そもそも日本は憲法第9条で戦争行為を禁じているし、いま中国と開戦しようと思っている日本人は皆無だと思います。
中国人記者: でも安倍首相は、憲法を改正し、自衛隊を軍隊に変えようとしているではないですか。
私: 中国を防衛している230万の人民解放軍だって軍隊でしょう。軍隊を持たない国家などあるでしょうか?
中国人記者: それでも中国人民はいま、日本の右傾化を大変憂慮しています。
私: それは日本人も中国に対して同じことで、2013年版の防衛白書にも「中国の脅威」が明記してあります。だからこそ、一刻も早い両国の和解が望まれるのだと思います。
中国人記者: 安倍首相は個人的には、どのくらい狡猾な性格ですか?
私: 安倍首相本人には、昨年秋に一度取材しただけなので、よく分かりません。でもただの印象ですが、人がよさそうに見えました。
中国人記者: そうですか・・・。
私: それでは一つ、私からも質問します。もし、中国でいま、安倍政権の支持率調査を実施したら、支持率は何パーセントくらいになると思いますか?
中国人記者: さあ、おそらく3%~5%くらいの中国人は、親日派ではないでしょうか。つまり、圧倒的大多数の中国人は、安倍政権を支持していません。
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このような調子だ。いまの日本で中国礼賛記事を書いても誰も買わないように、中国で安倍礼賛記事を載せても誰も買わないのだろう。そのことが、中国人記者たちと会話していて、感じ取れた次第である。