特別読み物「ムムム農場」にすべてをかけた元日銀支店長の楽しき人生 農薬ナシ、化学肥料ナシ、畜産廃棄物を使わない画期的農法

週刊現代 プロフィール

 その後、京都大に請われ、山中伸弥教授が発見したiPS細胞の知的財産管理や実用化を目指すiPSアカデミアジャパンで代表取締役社長を務める。そして'11年に、「ムムム農場」をはじめた。

 日銀の高松支店長を務めていたこともあり、香川には非常に愛着がありました。私は香川でもおいしい野菜が食べられないかと、生産農家を探していました。そんな中、知り合ったのが、四国有数の土木会社・山和土木興業の山西和雄社長でした。彼は高速道路などの草を刈って廃棄する仕事も請け負っていました。草は廃棄すると「産業廃棄物」扱いになり、処理にお金がかかります。燃やすための燃料も必要です。しかし、刈った草を発酵させて堆肥にすれば農業に使える。経費削減にもなり、消費する燃料を減らせ、しかも化学肥料を使わない栽培法もできる。こう考え、試験栽培を行っていたのです。

 耕作放棄地を借り受け、山和土木の社員と整地し、刈った草から肥料を作り、無農薬野菜を栽培していた。食べてみると、非常においしい。そのとき私は、これはビジネスになると思いました。山西社長との出会いこそが「ムムム農場」が生まれるきっかけとなったのです。

 妻は、私より先に菜食主義になっていたので、私が農業を始めることに大賛成でしたが、まさか農業をビジネスにしようと思っているとは知らなかったと思います。2人の子供たちはすでに独立していたので、京都と香川両方に住居を持ち、妻と一緒に都会と田舎を行き来する「複住」の生活が始まりました。

「ムムムの野菜」とは、「無農薬」「無化学肥料」牛糞や鶏糞をつかわない「無動物性肥料」の3つの「無」で栽培された野菜を指す。村山氏の命名だ。

 現在、栽培の中心になっているのは香川県東かがわ市の4・3haの農場。作物はキュウリ、カボチャ、ナス、オクラなど約40種。ミニトマトを食べてみると、信じられないくらい甘酸っぱい。タマネギやニンジンなどの野菜も、非常に味が濃いのが特徴だ。

 興味深い事実を述べましょう。オランダはアメリカに次ぐ世界第2位の農産物輸出国です。輸出額は約790億ドル、日本円に換算すると約7兆9000億円。ところが、同国の面積は九州と同程度しかありません。

 オランダが輸出しているのは、高付加価値の作物です。野菜なら、トマト、パプリカ、マッシュルームなど、単位面積あたりの利幅が非常に高い作物に特化しています。

 一方、日本の農産物輸出額は約27億ドル。2700億円程度に過ぎません。日本は'01年、年間約3兆円にのぼる貿易赤字を出しました。エネルギーや医薬品などの輸入で国富が流出しているのです。

 私は「農業」こそが貿易黒字化の鍵だと思っています。オランダにできることが日本にできないはずがない。そして私は、自分たちが実践している「ムムムの野菜」には、このビジネスモデルを実現する力があると思っています。