佐々木芽生 第4回 「全米50州の美術館に計2500点のヴォーゲル・コレクションを贈る計画を通じてロード・ムーヴィを撮りたかったんです」

島地 勝彦 プロフィール

佐々木 結局、あの素敵なご夫婦は2人で1人だったのでしょう。

立木 "2人で1人"ってのは名言ですね。仲のいい夫婦って、みんなそんな感じなんじゃないかね。

セオ さすがは長老です。最後に纏めてきましたね。

シマジ でもハーブは最初、寄贈作品が50ヵ所に散り散りになることに反対していたそうですね。

佐々木 そうなんです。ドロシーはハーブを説得するのに苦労したといっていましたね。

シマジ でもわたしはそれでよかったんだと思います。子供たちが引率されて美術館にやってきて感動していましたよね。保守的な美術館に刺激的な現代アートを持ち込んだだけでも意味深いことです。

 アーティストたちも自分の作品を多くのひとに観られてうれしいんじゃないですかね。それにハーブとドロシーも肩の荷が下りたことでしょう。税金から給料をもらい、それをぜんぶ国民に返したことになりましたからね。

立木 そうか。郵便局員のハーブの給料は元は税金だったのか。

セオ 市立図書館の司書ですからドロシーの給料も税金から出ています。

シマジ 日本政府はアメリカに騙されて郵便局を民営化してしまったけど、アメリカはいまでも国営なんだよね。

セオ シマジさんが政治的な発言をするのは極めて珍しいことですが、現実はその通りです。

佐々木 むかし日用雑貨店をチェーン展開して財を成したサミュエル・クレスという人がいまして、彼は50代から収集したルネサンスやバロック期のヨーロッパ美術を、ワシントン国立美術館のほか、全米18の美術館と23の大学に寄贈しました。全米50州に50点ずつというヴォーゲル夫妻の寄贈の方法は、そのクレス・コレクションを真似たようです。

 いずれにしても、ヴォーゲル夫妻のお蔭で有名になった現代アーティストがたくさんいました。