佐々木芽生 第4回 「全米50州の美術館に計2500点のヴォーゲル・コレクションを贈る計画を通じてロード・ムーヴィを撮りたかったんです」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ あの映画の素晴らしいところは説明的なナレーションが一言も入っていないところです。それから、額に入った肖像写真を一枚飾っているだけで、ハーブの死を観客に伝えているところですね。あれは見事な演出だと思いました。事実だけを繋げて映画に仕立てていく作業は大変でしょうね。

佐々木 そういっていただけるとうれしいです。ハーブの死をどう伝えるか、じつは凄く悩みました。

シマジ 終わり方がまたよかった。ドロシーが妹と・・・

セオ シマジさん、まだ観ていない方もいるので、ここでは詳しく話さないほうがいいですよ。

シマジ そうか。でも晩年のハーブが車椅子に乗ってドロシーに押されているシーンが何度も出てきますが、あれには胸がしめつけられました。

佐々木 5000点近いヴォーゲルコレクションをワシントン国立美術館に寄贈したものの、そのままでは倉庫に眠ってしまう可能性が大でした。そこで全米50州の美術館に50点ずつ再寄贈する、というアイデアがまた素晴らしいでしょう?

シマジ アート作品はみんなに観られてなんぼのモノですからね。でも気になったのはハーブがだんだん年をとって、あまり喋らなくなってくるところですね。人間は死が近づいてくると誰でも無口になるそうです。

立木 それはちがうね。シマジは死の直前まで喋りまくっているとおれが保証する。

シマジ みんなに囲まれて死ぬとしたら「みなさん、有り難う。愉しかった!」といいたいと思っているけど、誰にも看取られずピンピンコロリで死ぬのもまたいいかもね。

立木 「みなさん、いままで迷惑をかけてゴメンナサイ。反省しながら死にます」くらいいってから死んでもらいたいものだ。愉しんだのはお前だけなんだから。

佐々木 たしかにハーブも元気なときには気の利いた警句を飛ばしていましたね。